どう捜す認知症行方不明者 飯塚市の訓練に参加 細心の配慮で声掛け、確認

西日本新聞 筑豊版 田中 早紀

 認知症の人が行方不明になったと想定し、地域で声掛けや捜索訓練に取り組む動きが広がっている。2025年に団塊世代の全員が後期高齢者(75歳以上)となり、認知症を患う人が700万人を超えるといわれる中、誰もが安心して暮らせるまちづくりを進めるのが狙いだ。飯塚市の菰田まちづくり推進協議会が実施した訓練に参加し、認知症を巡る現状や課題を考えた。

 6日午前。菰田交流センターに小学生から70代までの幅広い世代の住民と、医療機関や福祉施設の関係者、市職員、飯塚署員ら計約150人が集まった。

 冒頭、グループホーム「ふぁみりー菰田」施設長の荻田哲司さんが訓練の概要などを説明。荻田さんによると、認知症患者は今どこにいて、声を掛けてきた相手が誰なのか分からないケースが少なくない。“敵”と思われないように配慮しないと、心を閉ざし、対応が難しくなるそうだ。

 「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」「否定しない」「怒らない」-。荻田さんはこの五つのポイントが重要と指摘し、「例えば『熊本の方に帰る』などとありえないことを言われても、否定せずその人の世界に飛び込んでほしい」と話した。

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 住宅街で実施した訓練は7、8人でグループをつくり、行方不明になった認知症患者を捜し出すという内容。患者役は普段、認知症の人と接している介護施設職員らが担当した。

 記者は、菰田小の児童が中心のグループに同行し「つえをつき、白髪で、帽子をかぶった女性」を捜索。5分後、神社の境内で女性を見つけ、男の子2人が正面にまわり「どこに行くんですか」と声を掛けた。

 患者役の福祉施設の施設長は「家に帰るったい」と言いながら「(自宅は)こっちやろうと思いよるばってん」と、児童の言葉に耳を貸さない。終始動き回るため、子どもたちが戸惑う場面もあったが、最後は安全な場所まで誘導することができた。教えてもらった五つのポイントを思い浮かべ、粘り強く声を掛け続けたのが良かったのだろう。

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 協議会が18年に訓練を始めたのは、飯塚記念病院・県認知症医療センターの江頭関巳室長らの提案がきっかけ。背景には認知症を患い行方不明になる人が増えていることがあった。

 警察庁によると、18年に認知症またはその疑いが原因で行方不明になった人は1万6927人(届け出ベース)。統計を開始した12年(9607人)の1・76倍。事故に巻き込まれるなどして亡くなった人は、18年より前に行方不明になった人も含め、警察庁が把握しているだけで508人に達するという。

 筑豊も人ごとではない。飯塚市によると、同市の認知症高齢者等徘徊(はいかい)SOSネットワークに登録されたお年寄りで、行方不明になり亡くなった人は13~17年の5年間で計4人に上る。

 飯塚記念病院の江頭さんは「たまたま数時間以内に発見できた“潜在的行方不明者”はもっと多い」と推測。「捜索は家族だけでは限界があり、単身の高齢者も増えている。地域で対象者を発見する体制づくりが重要」と、地域で訓練に取り組む重要性を訴える。

 認知症を巡っては、行方不明になった人が別の自治体で発見されるケースもあり「行方不明者はあっという間に遠くまで行く」との指摘もある。菰田地区社会福祉協議会の亀田益雄会長(67)は「近隣地区との連携も検討しながら訓練も続けていきたい」と話した。私自身も不十分だった認知症への理解を地域全体で深め、さらに協力体制を広げていく必要があると考えさせられた。 (田中早紀)

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