北九州、洋上発電の試金石 響灘風車メーカーに三菱系発表

西日本新聞 総合面 井崎 圭 東 祐一郎 竹次 稔

 北九州市若松区の響灘沖で進む洋上風力発電所計画で、設置・運営事業者のひびきウインドエナジー(ひびきWE)=北九州市=は30日、風車メーカーに三菱重工業グループの「MHIヴェスタス」(デンマーク)を選定したと正式発表した。

 MHIヴェスタスは、三菱重工と、洋上風力の欧州大手ヴェスタスとの合弁企業。納入機種は1基当たりの出力が世界最大級の9500キロワットあり、高さ(最高到達点)は200メートル。2022年度に設置工事が始まる予定。

 ひびきWEによると、過去の実績から見た機種の信頼性の高さなどを踏まえて選定した。同市が目指す、響灘地区の洋上風力発電産業の総合拠点化について「貢献する意欲を示した」のも理由だという。

 同市の北橋健治市長はこの日の定例会見で、新産業育成による地域活性化に期待を寄せ「国内で洋上風力発電所の先陣を切る」と強調した。 (井崎圭、東祐一郎)

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■部品製造、組み立て、補修 浮揚へ「拠点化」先行

 北九州市若松区の響灘沖の洋上風力発電所計画を巡り、同市は部品製造から組み立て、設置、補修に至るまで一連の作業を担う国内初の「総合拠点化」へ、他の候補地から一歩先行する。国内では大型洋上風力の計画が30カ所以上ある。同市の動向は、日本に洋上風力が本格的に普及するかの試金石になりそうだ。

 スタッフがパソコン画面に目を凝らす。風力発電のメンテナンス会社、北拓(北海道旭川市)の北九州支店。西日本地区で契約する約400基の陸上風車に異常がないか遠隔監視する。

 「鉄の街」の製造業の蓄積を生かし、洋上風力を新産業に育てたいとの市の方針に共感し、2013年に響灘地区に進出。増速機と呼ばれる中核部品を年間50~60台補修するなど、今後の本格稼働の前準備中だ。響灘の洋上風力の設置・運営を担う企業連合「ひびきウインドエナジー(ひびきWE)」にも参画した。北拓の吉田悟副社長は「22年度の着工までに社員数を30人規模にしたい」と話す。

 洋上風力は設備が大規模で、設置に使う特殊作業船のチャーター料は1日1500万円にも及ぶ。効率的に建設・運用するには、設置場所に近い基地港湾が不可欠だ。

 市関係者は「部品の製造、組み立て、海上への輸送、建設、メンテナンス、建て替えという一連の作業を担える産業集積を実現したい」と強調する。

 市が理想に描くのは、洋上風力が盛んな欧州の基地港として知られるドイツ北部の港湾都市ブレーマーハーフェンだ。もともと造船業が盛んだったが衰退し、風力発電の部品工場を誘致。現在の地位を確立して市勢を盛り返した。

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 再生可能エネルギーの「主力電源化」を掲げる国は、洋上風力に期待を寄せる。海に囲まれた日本列島で漁業者と調整できれば、普及の可能性が高いためだ。

 国内の洋上風力発電は、陸に近い「港湾区域」と沖合の「一般海域」に制度上分けられる。国は16年、港湾区域で事業化する場合の占用許可制度を創設。第1号がひびきWEで、同区域では全国最大規模となる。

 今年4月には一般海域に「促進区域」を設け、事業者が30年間発電できる新法を施行。前段階の「有望な地域」に長崎県五島市沖、千葉県銚子市沖、秋田県の2カ所の計4地域を選定した。これらの地域を中心に大型計画が相次ぐ。

 日本風力発電協会(東京)によると、原発10基分相当(約1千万キロワット)の洋上設置が実現すれば、経済波及効果は13兆~15兆円。9万人の雇用が見込まれ、適地を抱える地方からの関心が高まっている。

 国は開会中の臨時国会に港湾法改正案を提出し、基地港湾の整備を支援する方針。主要港としては北九州のほか、秋田港や茨城県鹿島港の名前が挙がる。同協会は「重量部品に耐えられる港の改良が必要。どこが早く動けたかで成否は決まる」と指摘する。

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 電力他社に比べて原発再稼働が進む九州電力は「原発を最大限活用する」スタンスは守る一方、洋上風力を含めた再生可能エネルギーを「九州域内外、海外で開発する」と原発と両立させていく方針だ。

 子会社の「九電みらいエナジー」から社長を送り込んだひびきWEは17年、北九州市から占有権を得て、風況、地質調査を終えた。みらいエナジーの寺崎正勝取締役は「まず北九州で成功モデルをつくりたい」としつつ、響灘の基地港湾を活用しながら「半径500キロ以内を目安に、一般海域や韓国での開発も狙っていく」と意気込む。 (竹次稔、井崎圭)

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