親子が紡ぐ命の物語 ドラマ「4分間のマリーゴールド」 姉妹で原作漫画、母小説化

西日本新聞 社会面 黒田 加那

 愛する人と共にある時間は一秒一秒が宝物-。10月からTBS系でテレビドラマ化されている人気漫画「4分間のマリーゴールド」(小学館)。作者の「キリエ」は福岡市在住の姉妹漫画家、桐衣奈央(きりえなお)さんと知代(ともよ)さんだ。2人の創作活動の原点は、本作のノベライズ本を執筆した小説家でもある母、朝子さん(68)=同市=の存在だった。

 作品は、手を重ねた人の最期の姿が見えるという特殊能力を持つ救急救命士の男性が主人公。彼は人々の「死」という運命にあらがい、目の前の傷病者を救おうと日夜、力を尽くしている。彼は血のつながらない義姉に恋心を抱くが、余命1年という運命が見えてしまった…。切ない恋物語にとどまらない、人の生死という重いテーマに貫かれた作品だ。

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 姉妹が幼い頃から、朝子さんは即興でお話を作ったり、2人が主人公の漫画を描いたりして娘を楽しませた。2012年、姉妹にせがまれて書いた小説が小学館文庫小説賞を受賞。62歳のとき、「薔薇(ばら)とビスケット」で小説家としてデビューした。

 朝子さんは10年ほど前に乳がんを発症した。姉妹は動揺したが「母はずっと元気でいると信じ込み、甘えていたと気付いた」と奈央さん。入院中、毎日のように肉まんやコロッケなど母の好物を手作りして見舞いに訪れた。

 当時、姉妹は漫画家を目指していたものの、プロへの道に壁を感じ、迷いを抱いていた。母を襲った病に、まだ若い自分たちには遠かった「死」を身近に感じたという。

 大切な人との限りある日々をいかに過ごすか。いつ終わるか分からない人生をどう生きるか。「やりたいことを突き詰めよう」。それ以来、姉妹の思いがぶれたことは一度もない。そして「4分間のマリーゴールド」が生まれた。

 本作の執筆中には、5年前に亡くなった大好きな祖母のことを幾度も思い起こした。がんを患い、ホスピスに入った祖母。最期をみとりながら、多忙を理由に祖母と距離を置いていたことを悔やんだ。「1秒が惜しい」。本作の主人公と当時の思いが重なった。

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 ドラマ化を機に作品の小説化が決まり、朝子さんに白羽の矢が立った。「世界観を壊さぬよう」と朝子さんは原作に忠実に書き始めた。が、母のつくる物語を長年愛読してきた娘たちから「お母さんならもっと良い表現が出るはず。無難に書き流さないで」と励まされて奮起した。小説だけのオリジナル場面も多く盛り込み、登場人物が躍動する小説を書き上げた。

 小説のラストには、漫画の最終話の後日談に当たる場面を描いた。物語をどう締めくくるか。母が悩んだ末に生まれた結末は、偶然にも姉妹が思い描いていた案と同じだった。「どんな文豪でも書けない、私たちの価値観を知っている母じゃないとできないノベライズ」と知代さんは太鼓判を押す。

 娘の漫画を小説化するというかねての夢がかなった朝子さん。現在は、娘たちの姿を参考にしながら、新人漫画家を主人公にした次回作を執筆中だ。「今度は私が書いた小説を漫画化してもらうのが夢」とほほ笑む。親子の絆が、また新たな物語を紡ごうとしている。 (黒田加那)

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