沖合を漁船が通り過ぎる

西日本新聞 社会面 丸野 崇興

 沖合を漁船が通り過ぎる。岸には釣り人が数人。秋晴れの下、波の音が響く。よくある海辺の光景だ。

 19日の水俣病犠牲者慰霊式の翌朝、会場の埋め立て地「エコパーク水俣」を訪れた。参列者がいた大型テントの撤去作業が始まっていた。

 海を眺めながら、患者・遺族代表の上野エイ子さん(91)が読み上げた「祈りの言葉」を思い出す。「水俣病で亡くなった多くの人たちの生命(いのち)を決して無駄にしないでください。私のようにつらく悲しい思いをしないで済むように、自然を大切にすると約束してください」

 水俣湾の埋め立て地には今、「水銀を含むヘドロを封じ込める工事をした」と伝える看板が立つ。美しい海を取り戻すために埋め立てた、悲しい歴史が地中に眠る。

 「どうか皆さん、水俣病のことを忘れないでください」

 上野さんの言葉をかみしめながら、海を見た。青さが目に染みた。 (丸野崇興)

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