台湾を歩く こども特派員ルポ<下>タイヤル族が暮らす烏来 先住民族の文化に触れる

西日本新聞 こども面

 こども特派員による台湾取材の報告の最終回です。台湾の人の多くは数百年から数十年前に中国大陸から渡ってきた漢民族です。先住民族はそのずっと前から台湾で暮らしてきた人々です。先住民族の部族の中でも3番目に人口の多いタイヤル族が多く住む、新北(シンペイ)市烏来(ウライ)区をたずねました。

【紙面PDF】台湾を歩く こども特派員ルポ<下>

 大都会の台北(タイペイ)を南に抜け、車で約1時間。緑に囲まれた坂道を進んでいくと、谷間を流れる川が見えた。烏来は温泉地としても有名で、川沿いには旅館があちこちに建っていた。

 私たちはタイヤル族の長老が待つという場所に向かった。長老は長い白髪、民族衣装でペンダント姿かな…。迎えてくれた高富貫(ガウフグァン)さん(77)は想像とはちがい、日本でも見るような洋服姿。なんだか自分のおじいちゃんに似ていて、なつかしい気持ちになった。

 高さんは「2014年から4年間、新北市烏来区の区長をしていました」と自己紹介した。烏来区は人口約6400人、タイヤル族はそのうち約3千人。区民のリーダーである区長はタイヤル族しかなれない。

 高さんは日本語がとても流ちょうだった。子ども時代は家ではタイヤル語を使い、学校では中国語で勉強したという。それなのになぜ? 日本航空で30年以上働いていたこともあるが、「子どものころ、周りの大人たちが日本語を話していたので聞き慣れていた」と振り返る。日本が台湾を植民地として統治し、日本語教育を徹底した50年間の「日本時代」の影響だ。今でも日本語が共通語のタイヤル族の集落もあるそうだ。

 先住民族は長い間差別されてきた歴史があり、台湾政府は彼らの土地や文化を守るために力を入れている。高さんは「今は小中学校で週1、2回、タイヤル語の授業がある」と話す。

 日本の統治時代に起きた太平洋戦争中には「高砂義勇兵」と呼ばれた多くの先住民族が戦地に行った。高さんの祖父は激しい戦いがあったニューギニア島で亡くなったという。日本統治に抵抗する運動や事件でも大勢の人が命を落とした。

 「日本時代」をどう思うか聞いた。高さんは「その後に台湾に来た(独裁的な)国民党政権に比べたら『日本の方が良かった』と言う人もいる」と話す。3歳の時に日本の統治が終わったため記憶にないというが、「大人たちからは『日本精神(行儀良く、嘘をつかない、先輩の言うことを聞く)を大切にしなさい』とよく言われた」と振り返った。

 ●民族名に誇り 顔の入れ墨、大人のしるし

 タイヤル族の文化を紹介する烏来泰雅(タイヤル)民族博物館に着くと、案内役の女性(57)が待っていた。烏来で生まれ育ったタイヤル族だ。「私の名前の中国名は『林秀卿(リンシュウチン)』。普段は民族名の『アムイ・スル』を使っているの」と誇らしげに話した。

 住居や食文化を紹介するコーナーには、竹や木でできた建物、狩りや祭りの絵や写真が展示されていた。アムイさんが「タイヤル族ではシンボルの鳥がおこりっぽく鳴くと狩りは不調、きれいな声だと獲物がたくさんとれると言われていた」と説明した。

 壁には女性たちの顔の大きな写真パネルが飾られていた。ほおや額には入れ墨で模様が入っている。「昔、女性は機織りが上手にできるようになったら、男性は首狩りを経験したら入れ墨を入れることができた」という。15、16歳ごろに行う大人の仲間入りをするための伝統的な通過儀礼で、日本の統治が始まってからは禁止されたという。

 アムイさんや烏来の人たちは顔のほりが深く、とてもきれいだと思った。“美の秘訣”を聞くと、「烏来のきれいな水を飲んでいることかしら」と笑った。

 お昼ご飯には山菜やイノシシを使ったタイヤル族の伝統料理を食べた。香辛料の香りに食欲がそそられた。昔はバナナの葉や竹を皿にして盛りつけたという。自然の中の物を上手に使っていたのだと思った。

 ●台湾の先住民族

 現在、アミ、パイワン、タイヤルなど16部族が認定されている。オーストロネシア語族に属し、台湾には数千年前から暮らしている。部族ごとに住む地域や言語、文化が異なる。台湾の人口2369万人のうち、先住民族は2%、その他はほとんどを中国大陸から来た漢民族が占める。

 17世紀以降になるとオランダ、清、日本の支配を受けて多くの先住民族が土地を奪われた。戦前は日本語、戦後は中国大陸からやってきた国民党による中国語教育を受けたため、自分たちの言語や文化を失った人たちも多い。

 蔡英文(ツァイインウェン)総統の祖母はパイワン族出身。日本で活躍する台湾人タレント、ビビアン・スーさんも母はタイヤル族。

 ◆中国との関係は? 中華人民共和国(中国)は台湾を中国の一部だとして「台湾省」とする。これを「一つの中国」原則などと呼ぶ。一方で、台湾政府は「中華民国」という独立した国だと主張する。しかし、日本など中国と国交がある多くの国は、台湾を正式な国とは認めていない。

 ◇この取材は台北駐福岡経済文化弁事処(福岡市中央区桜坂)の協力で行いました。駐福岡弁事処は台湾の総領事館としての役割を果たしています。台湾と九州7県・山口県地区との外交の窓口として文化や経済の交流を進める活動、ビザの発行などを行っています。

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