車椅子でも育てやすく わが家をバリアフリーに 障害児向け 周知や普及は道半ば

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 手足が不自由だったり、一人で座るのも難しかったり。自宅で障害児を介護する家族が頭を悩ませるのは、住まいのバリアフリーだ。出入りや移動、トイレ、入浴などをしやすくする設備は、子どもの成長に伴って改修や工夫を重ねる必要があるものの、そうした情報やノウハウはあまり知られていない。実際の導入例から、課題を探った。

 北九州市の木造2階建て住宅。特別支援学校高等部1年の次男(15)を背中越しに支え、壁に取り付けた手すりにつかまらせて1歩ずつ進む。「1学期から2学期までに身長が7センチも伸びた。体重も30キロ。私が腰を痛めたこともあるので、抱えて移動させるだけでなく、少しずつ立つ姿勢もできるようにと考えて練習しています」と母(49)。「いつか自分の足で立ってみたい」。次男も笑顔で話した。

 ▼将来見据えた設備

 次男は脳性まひで、幼いころから車椅子暮らし。前に住んでいた市内のアパート1階は坂の上にあり駐車場から長い階段もあったため、9年前にこの家を建て、家族5人で移り住んだ。

 設計から施工、改修まで手掛けたのは、同市内外で主にバリアフリー住宅を扱う株式会社「神崎工務店」。家を建てる前、母はまず大手のハウスメーカーに相談したが「息子を全然、見もしないような感じ」だった。夫のつてを通じてたまたま知り合ったのが同社の社長、神崎嘉博さん(59)。息子と実際に触れ合い、日常の生活スタイルや困り事だけでなく「大きくなってから家でどう介護していくかを含めて、じっくり聞いてくれた」と母は振り返る。

 新築の際には、部屋の間口や通路のスペースを広く取り、玄関は引き戸の自動ドアにし、外から出入りするスロープを整備。その後、次男の成長に従い、開き戸があっても途切れず使えるはね上げ式の手すり▽トイレ用の座位を支える手すり▽浴室用のリフトと座ったまま入浴できる分離式車椅子▽電動で上下する低床ベッド-を取り入れた。

 「介護する親が楽になれば、それだけ息子に笑顔で接することができる。住みよい家と暮らしが実現し、感謝しています」

 ▼足りない相談窓口

 同社は2000年に介護保険制度が始まったのを機に、高齢者向け住宅を扱い始めた。「体が不自由な子どもや病気、事故で車椅子を使うようになった人のニーズが、徐々に増えてきた」と神崎さんは言う。

 障害児向けの設備は、高齢者のように手すりやスロープを付けるだけでは不十分。体の大きさや痛みを感じる部分、可能な姿勢がそれぞれ大きく異なるため、使い方や設置を工夫する必要がある。だが同社のように詳しい住宅業者はほとんどなく「情報やノウハウが、当事者になかなか伝わらない」のが実情という。

 介護保険では、住宅の福祉用具のレンタル利用をケアマネジャーが仲立ちするのが一般的。一方、障害児者向けにはレンタル制度もなく「詳しい相談支援専門員が少ない」ことなども、背景にあるとみられる。

 同社は今年、福岡市にも営業所を設立。各地でセミナーを開き、リフォームの事例説明や浴室用リフトの体験などPRに力を入れ始めた。フェイスブックやインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)でも事例写真を公開している。

 ▼負担額に地域格差

 普及への最大のネックは費用面だ。トイレなどの手すりやリフト、低床ベッドを導入した北九州市の2階建て住宅の場合、総費用は約120万円。こうした日常生活用具や住宅改修には補助制度があるものの、自治体によって自己負担の上限額はまちまちで、このケースでは約50万円が手出しとなった。設備の耐用年数も8年前後で、所得制限もある。

 障害児の在宅介護の負担軽減策として、近年はヘルパーや訪問看護も増えつつあるが、住環境を整えれば「他人に頼らずに自分でできることが増え、自立心が芽生えていく」(神崎さん)。地域福祉の格差を埋めていく知恵は、住まいにも求められている。

 (三宅大介)

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