消費税廃止論と財源論 重要なのは格差是正 野党は対抗する展望を自公政権に示せるか

西日本新聞 文化面

 BS・TBSの番組「報道1930」。9月30日の生放送で、山本太郎(れいわ新選組代表)と原真人(朝日新聞編集委員)が討論を行った。

 山本は消費税廃止論者。一方、原は財政規律を重視する観点から、消費税増税に賛成してきた。両者の意見は真っ向からぶつかる。

 しかし、番組前に変化が現れた。原はWEBページ「論座」に「山本太郎の消費税廃止、増税派の私が評価するわけ」(8月8日)を寄稿し、山本への理解を示した。原曰(いわ)く、「消費増税の『一本足打法』で財政再建を進めていく財務省の戦略は、長期的にかなり厳しいと考えるほうがいいのではないだろうか」。

 山本は代替財源として、所得税・法人税にメスを入れることを提案する。所得税については、累進税率が低く抑えられる分離課税をやめて、総合課税に統一し、金融所得への課税を強化する。所得税の最高税率の引き上げを行い、富裕層の税負担を重くする。また、法人税に所得税と同様の累進税を導入し、大企業に対する租税特別措置をやめる。さらに国債の発行を積極的に進める。

 このような山本の提案に対して、原は「一考に値する」と言う。これまでの与野党の論戦は、「消費増税に反対か? 賛成か?」という対立軸だったが、山本の主張は「消費税増税VS所得税・法人税増税」という対立軸に変えている。これは十分に検討の余地がある。

 番組では、財源問題が主に取り上げられたが、原は富裕層への所得税増税に対して理解を示し、金融所得への課税には明確に賛成の意を示した。しかし、日本は富裕層の数が少なく、年収2000万円以上は全体の1・3%にすぎない。これだけでは財源として不十分というのが原の主張だ。

 論争になったのは法人税と国債である。原は、消費税から法人税への付け替えは、消費者の負担減にはつながらないと言う。両者は、実は似たような税であり、結局のところ法人税増税分をモノやサービス価格に上乗せするため、最終的には消費者が負担することになる。実態は、事業者への課税の仕方を変えているにすぎない。

 これに山本は反論する。消費税の滞納は中小企業が中心である。消費税は中小企業の首を絞めている。一律に同率の税がかかる消費税ではなく、法人税に累進性を導入する方が中小企業の負担が少ない。

 最大の対立点は、国債をめぐる認識である。山本は、自国通貨建ての国債のデフォルト(債務不履行)は考えられないと主張する。現在は歴史的な超低金利が続いている。市場は国債発行を求めており、これは日本の財政が健全と見なされている証しである。

 これに対し原は、通貨暴落の可能性を視野に入れるべきだと訴える。番組終了後に「論座」に寄稿した「山本太郎×原真人テレビ討論・場外編」(10月4日)では、「日銀が紙幣(電子情報も含めて)を刷りまくった結果、円の信用がなくなることが考えられる」と主張する。日銀が国債を買い支えている間は、ただちに国債暴落は起きないだろう。しかし、「通貨円が暴落すれば、政府や日銀では止められない」。「ここ数十年の間だけでも、ポンド危機の英国、ルーブル危機のロシア、バーツ危機のタイ」の例がある。

 山本は、ハイパーインフレのような状況が起こることは、現状として考えにくいと言う。しかし、ありうるリスクを視野に入れて行動するのが政治家の役割であると原は説く。

 国債をめぐる原理的な認識は平行線をたどる。しかし、両者の議論は接近可能である。格差の是正こそ重要との認識は共通している。そして、税の取り方を変えるべきだという点でも一致を見る。あとは具体的な税制のあり方をすり合わせ、国債発行の規模で折り合いを付けられるかである。政治的な合意形成は、十分可能である。

 山本の消費税減税論によって、あるべき社会の像をめぐる争点が明らかになってきた。あとは野党間で合意形成を重ね、自公政権に対抗する社会ヴィジョンを示すことができるかにかかっている。

 野党は新たな構想と物語をつくることができるのか。動向に注目したい。

(なかじま・たけし=東京工業大教授)

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