首相「私に責任」軽く 河井法相辞任 資質軽視 起用に批判

 1週間で2人の閣僚が辞任に追い込まれた。31日、菅原一秀前経済産業相に続き河井克行法相が事実上更迭され、安倍晋三首相は「任命責任は私にある」と神妙な表情を浮かべた。だがいつもの「決まり文句」にどれほどの真剣味があるのか。問題閣僚はスピード更迭しさえすれば、政権運営にも支持率にも影響しない-。長期政権の経験則に自信を深めているかのような更迭劇に、自民党内からも「安倍政権は国民をなめ過ぎていないか」と疑問の声が漏れる。

 「河井の説明は要領を得ない。法相の職の性格からして厳しいですね」(菅義偉官房長官)

 「法務だからね」(首相)

 複数の政府関係者によると、菅氏は10月30日に首相と会い、更迭を進言。首相も了承した。「法相の立場のまま刑事告発される事態を恐れた」。政権トップの判断を、官邸幹部はこう証言する。

 前日の29日。河井氏の妻で参院議員の案里氏の公選法違反疑惑を週刊文春が報じるとの情報が伝わると、菅氏はひそかに河井氏を呼び出し「どういうことだ」と問いただした。

 「妻の問題で、法相の職務とは関係ない」「妻の選挙はスタッフに任せきり。私も妻もあずかり知らない」。河井氏は繰り返し釈明し辞任を否定。菅氏は批判に耐えられないと判断し、引導を渡した。「ずるずるやれば、議員辞職になりかねないぞ。大臣を辞めて一から出直せ」。河井氏はうなだれるしかなかった。

      ◇

 河井氏は、菅氏を慕うグループ「向日葵(ひまわり)会」の世話人を務め、菅氏に近い。9月の内閣改造で初入閣したのも、菅氏が首相に推薦したのが決め手になった。

 菅原氏も菅氏の側近で、菅氏の進言で初入閣した。首相は菅原氏の疑惑が浮上した際、一切の処遇を菅氏に一任。同じく菅氏に近い梶山弘志氏を起用した後任選びも、全て菅氏が主導した。

 河井氏を巡っても、首相は当初、菅氏に「全部預ける」と収拾を一任した。だが菅氏は自ら推した閣僚を続けて更迭する事態に責任を感じ「後任は総理がお選びください」と要請したという。

 首相が後任に起用した森雅子元少子化対策担当相は、首相の出身派閥の細田派。「首相と菅氏の近い人だけが取り立てられる。この異常事態に及んでも、結局は『お友達内閣』だ」。自民党の閣僚経験者は官邸への不信を募らせる。

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 「『身体検査』が考慮されなくなっている」。ある政府職員が声を潜める。

 身体検査とは、閣僚候補となった議員のスキャンダルの有無を確認する作業。組閣や内閣改造の前、内閣官房や警察関係者が調査し、官邸に報告する。9月の内閣改造の際も、閣僚候補の不祥事情報が官邸に報告された。

 ところがその多くが無視され、「問題あり」とされた複数の議員が閣僚に就いたという。政府職員は「昨年10月の内閣改造から、こうした傾向が強まった」と明かす。

 2012年の第2次安倍政権発足後、河井氏で10人目となった閣僚辞任。内閣支持率は一時的には下落するものの、ほとぼりが冷めれば50%前後に持ち直してきた。別の政府関係者は「首相は『任命責任は私にある』と国民に謝れば乗り切れるという妙な自信を持っている」と話す。

 資質を軽視し「お友達」「在庫一掃」の閣僚起用を繰り返す。問題が発覚して辞任するのも「想定内」-。自民党の幹事長経験者は突き放す。「任命責任の取り方とは何なのか。首相は説明する必要がある」 (湯之前八州、河合仁志、古川幸太郎)

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