ラグビーW杯 「多様性」の強さを学んだ

西日本新聞 オピニオン面

 多くの「驚き」と「学び」に満ちた日々だったと言えるのではないか。ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会があすの決勝で閉幕する。

 アジアで初開催とあって、盛り上がりが心配されたものの、開会すると日本代表の躍進やトップレベルのプレーに列島が沸き、交流の輪が広がった。チケット約180万枚がほぼ完売するなど収入面でも過去最高の規模という。統括団体ワールドラグビー会長も「ベストの大会」と賛辞を贈った。まずは価値ある成功だと評価したい。

 最初の驚きが日本代表の強さだろう。1次リーグを4戦全勝で突破、目標のベスト8に進出した。飛躍の一ページを刻んだ快挙を称賛したい。九州ゆかりの選手の健闘に心が躍った。福岡高出身の福岡堅樹選手、熊本・荒尾(現岱志(たいし))高の流大(ながれゆたか)選手らの勇姿は今も記憶に新しい。

 代表メンバー31人のうち15人が海外6カ国の出身・国籍という混成チームは「ワンチーム」のスローガンそのままに強豪に挑んだ。その多様性こそ強さを支えたと言える。政府も掲げる「多文化共生」の意味や今後いかに実践していくのかを、社会全体で考える良い素材を与えてくれたのではないだろうか。

 国内のラグビー人気も高まった。これを「にわか」のブームで終わらせるか、国民的なスポーツへと裾野を広げられるか。ラグビー界の課題だろう。

 試合会場があった全国12都市のうち九州は大分、福岡、熊本の3市で計10試合が行われた。6県10市はキャンプ地だった。各地でチームと住民らの交流があり、試合をサポートした高校生もいた。福岡県では小学校やスポーツ施設で実際にプレーなどを通じて触れ合った。その体験と記憶は個人にとどまらず地域社会のレガシー(遺産)であり、未来の糧になるだろう。

 試合やキャンプを支えたボランティアも見逃せない。運営ノウハウなども含め今後に生かしてほしい。海外のファンを迎えた観光地にも恩恵があった。試合前日などには4千人超の海外客が宿泊した大分県別府市は「アピールのよいきっかけになった」と振り返る。今後の地域振興を考える教材になるはずだ。

 残念だったのは台風で3試合が中止になったことだ。しかしカナダ代表チームは試合がなくなった当日、滞在中の岩手県釜石市の被災地で土砂を除くボランティアに汗を流した。心優しきラガーマンの利他的な姿は大会の名場面と刻みたい。

 決勝も日本大会らしい顔合わせになった。日本を破った南アフリカと日本の前ヘッドコーチが率いるイングランド。有終の美を飾る名勝負を期待したい。

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