「栄光へのノーサイド」出版 戦争で犠牲のラガーマンをモデル

西日本新聞 佐賀版 入江 剛史

 ラグビー・オーストラリア代表に選ばれた日系人がいた-。映画プロデューサーの増田久雄さん(73)が、第2次世界大戦で命を失ったラガーマンの実話を基に小説「栄光へのノーサイド」(河出書房新社)を書き上げた。オーストラリア兵として佐賀出身の父親の祖国・日本と戦い、捕虜となった過酷な境遇を描く中で、敵味方を分け隔てなく包み込むラグビーの精神「ノーサイド」を伝える。

 主人公は「ブロウ」の愛称を持つ、ウィンストン・フィリップ・ジェームズ・イデがモデル。

 小説の中でブロウは、父親の井手秀一郎が渡ったオーストラリアで生まれ育つ。1939年、オーストラリア代表として英国に遠征。第2次世界大戦が始まって試合は全て中止となり、失意のまま帰国。オーストラリア軍に入隊し、マレー半島に派兵された。

 日本兵との激戦の末に捕虜に。収容所の日本兵の傲慢(ごうまん)な振る舞いに怒りを覚え、劣悪な待遇に絶望感を抱く中、ある人物に出会う。全日本ラグビー軍の一員だったという所長の大石哲治大尉。命を奪い合う戦地で2人が敵も味方もない「ノーサイド」を語り合う。

 日本、オーストラリア、米国と舞台が移り、1930年代から80年代まで時が流れる壮大なストーリー。「ラヂオの時間」などを手掛けた増田さんがブロウの存在を知って脚本を執筆したが、巨額の製作費を要することもあって映画化が難航。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会を控えた7月、小説として出版した。1600円(税別)。

 W杯では外国出身選手も日本を背負って戦ったジャパン。増田さんは「日本人という考え方を壊してくれた。日本人って、もっと広いものだと思わせてくれた。それが世界人という考えにつながる。まさしくノーサイドだ」と話す。(入江剛史)

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