米民主、ポピュリズム拡大 富裕層敵視、社保改革訴え 識者「左傾化避けられぬ」

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 来年の米大統領選で政権奪還を目指す野党民主党で、大企業や富裕層を敵視し社会の変革を訴える「左派ポピュリズム(大衆迎合主義)」候補が存在感を強めている。中低所得者層の不満を背景に、社会保障の大幅な拡充を主張。実現には膨大な財源が必要で「夢物語」との批判が強いが、支持者は「庶民のためだ」と意に介さない。党の大統領候補指名を争う予備選の開幕が来年2月に迫る中、勢いは衰えそうにない。

 「トランプを大統領の座から引きずり下ろすだけではない。米国を一新しよう」。10月中旬、ニューヨークの公園。民主党の大統領候補サンダース上院議員が野太い声を響かせた。

 サンダース氏は同月初めに心筋梗塞で入院し、健康が不安視された。この日の「復活集会」には若者や家族連れなど2万人が集結。富が巨大資本に集中し、政治家は格差拡大に目を向けず、庶民は苦しんでいるとサンダース氏が主張すると、支持者らは「大企業や金持ちに課税しろ」と絶叫。国民皆保険の導入や最低賃金の大幅引き上げといった政策を訴えるたび、大歓声が湧き上がった。

 民主党の大統領候補指名争いで、急進的な変革を訴える「左派ポピュリズム」候補として知られるのが、最左派のサンダース氏とウォーレン上院議員だ。

 IT大手の解体などを掲げるウォーレン氏への支持はここ数カ月、着実に拡大。党予備選の初戦となる党員集会が来年2月に開かれる中西部アイオワ州などで支持率トップに立った。各種調査の平均支持率でも一時、長くトップを走る党主流の穏健派候補バイデン前副大統領を抑えた。さらにウォーレン氏とサンダース氏の支持率を合計すれば4割近くに達し、3割弱のバイデン氏を大きく上回る。

 “左派急伸”の現状に、敵視の対象となった経済界からは警戒論が浮上。左派候補の政策には財源を巡って批判も尽きないが、支持者はどこ吹く風だ。サンダース氏の集会に参加した公務員のマルコさん(30)は「ポピュリズムのレッテルを貼りたいなら貼ればいい。大事なのは医療費支払いに困るような庶民の暮らしを救えるかどうかだ」。2児の父アレックスさん(36)は「バイデン氏ではトランプ政権が壊した米国の政治を元に戻すことはできても、改革はできない」と言い切った。

 前回大統領選で、移民問題などで危機感をあおり、既存政治を批判して当選したトランプ大統領に対抗するには「リベラル派もポピュリズムを掲げ、トランプ氏に流れた中間層を取り込むべきだ」(ニューヨーク州の女子大学生)との意見も少なくない。予備選が本格化すれば、左派候補への批判が強まるのは確実だが、もはや支持の広がりは無視できない。識者からは「民主党の左傾化は避けられない」との指摘が上がる。 (ワシントン田中伸幸)

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