英語試験見送り 「民間」活用にこだわるな

西日本新聞 オピニオン面

 萩生田光一文部科学相がきのう、大学入学共通テストの枠組みで実施する英語民間検定試験について2020年4月の実施を見送ると発表した。教育現場に一定の混乱は予想されるが、入試の公平・公正を考えると、やむを得ない判断だろう。

 民間試験導入は多くの批判にさらされてきた。文科相の「身の丈に合わせて頑張って」という失言がいみじくも、経済力・居住地による格差が織り込まれた制度であることを浮き彫りにし、野党に加え政府内でも見送りを求める声が高まった。

 多くの高校生らが民間試験を想定して勉強に励んできた。高校や大学の責任者から繰り返し示された疑問に耳を貸さず、試験実施団体の準備遅れにも目をつぶって、見送りの決断を遅らせてきた文科省の罪は重い。

 文科省は1年がかりで抜本的な見直しを行い、24年度をめどに新たな制度の導入を目指すという。民間試験導入の是非も検討対象となる。まずは教育界に広がる疑問と批判に、正面から向き合う姿勢が求められる。

 民間試験は6団体7種類で実施が予定されている。受験生は最大2回受験し、成績は国際標準規格で6段階評価され、大学側は一定の成績を出願資格にしたり、大学独自の試験に加点したりする計画だった。

 ただし、6団体全てが全都道府県で試験を実施するわけではない。試験会場は都市部に偏る可能性が高い。1回の受験料が2万円を超える試験もあり、離島やへき地の受験生には交通費や宿泊費の負担も加わる。

 成績として使う試験は最大2回だが「腕試し」は何度も受験はできる。各試験はそれぞれの設問傾向があり、受験回数が多いほど点数もよいとされる。

 こうした都市部の裕福な家庭の受験生ほど有利という疑念は最後まで拭えなかった。

 現在進む大学入試改革は、安倍晋三首相が設けた教育再生実行会議の13年の提言から始まった。その狙いは、能力や意欲、適性を多面的・総合的に評価する選抜への転換とされた。知識偏重の1点刻み選抜と、1回の試験で合否が決まる「一発勝負」からの脱却が盛り込まれた。

 翌年、中教審が「聞く・話す・読む・書く」の英語4技能を評価する民間試験活用を打ち出した。2回受験と国際標準での6段階評価は再生会議の提言にも沿った内容でもあった。

 それでも、文科省の制度設計に問題があるのは明らかだ。いま一度、入試改革の原点に立ち返り、教育現場の声も踏まえて白紙から議論を深めるべきだろう。民間試験にはそれぞれの目的や歴史がある。入試への活用にこだわる必要はない。

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