クルーズ船増に期待と不安 長崎港2バース化、知事が国に要請 接岸増狙う県「年間240億円経済効果」

西日本新聞 長崎・佐世保版 岡部 由佳里 華山 哲幸

 全国屈指の大型クルーズ船の寄港地である長崎港(長崎市)の松が枝国際観光船埠頭(ふとう)で、2隻同時に接岸できる「2バース化」してさらに訪日外国人客による経済効果を取り込もうと県は躍起だ。2隻の接岸による経済効果を年間約240億円と試算し、県は国に事業化を求める。ただ寄港に合わせて貸し切りバスを運行する事業者は、安価な価格で運行を強いられるケースも。クルーズ船が増えれば恩恵ばかり、とも言い切れない側面も浮かぶ。

 「現状ではフル稼働しても、年約140隻の入港を断らないといけない」。中村法道知事は先月11日、財務省で岡本薫明事務次官と面会。大型客船が1隻しか立ち寄れない長崎港の状況をこう訴え、2隻が接岸できるようにする事業の着手を求める要望書を渡した。

 2バース化は、埠頭の岸壁を南側に320メートル延伸する計画だ。国は本年度、費用対効果などを検証するための調査費3千万円を計上。現地の土質調査や概略の設計、コストの試算を進めており、岡本氏は「よく検討したい」と語った。

 県が最近明らかにした試算では、2隻が接岸できるようになれば、現在の寄港数の1・5倍以上の年400隻以上の接岸が可能となり、約140万人の利用者が見込まれる。1隻当たりの経済効果は6千万円程度で、240億円という数字はここから算出する。

 港湾課によると、現在は運航する船会社が需給調整しており、長崎港への寄港が一時的に減っているものの、各会社へのヒアリングを踏まえると、将来的にはまた増える傾向にあると分析する。「現在は安価なツアーが中心だが、海外客の所得水準の向上に伴い、今後は高級志向にシフトするのではないか」と担当者は期待を寄せる。

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 一方、これまでクルーズ船客向けに貸し切りバスを運行して一定の収益があった県交通局の県営バスは、2018年度受注台数が前年度の約半分の約900台に激減。経常損益も前年度比2億円以上悪化した。

 背景には、数年前から増えたバスの手配を依頼する中国人観光客専門仲介業者「ランドオペレーター」の存在がある。業界では、旅行会社の依頼を受けた仲介業者は、日本のバス事業者に貸し切りバスの運行を発注する一方、客を連れて来たという名目で事業者から手数料をもらうのが通例だ。

 ただ、近年増えた中国系仲介業者が日本のバス事業者に求める手数料は、これまでの相場の4~5倍。結果的に、手数料を差し引いて事業者が受け取る実質運賃にしわ寄せされ、バスを安全運行させるために国が必要と定めた最低運賃を大幅に下回りながらも、運行を余儀なくされる事業者が増えているという。

 県営バスは、最低運賃を下回る額で安易に受注すれば、バス運行の安全確保が損なわれるだけでなく、県内の中小バス事業者にも「買いたたき」が波及しかねないと判断。18年度は受注を控えたという。その代わりに、福岡など県外のバス事業者が長崎港に着いた中国人観光客を案内するケースが目立っている。

 国土交通省は、実質運賃の底割れに歯止めをかけようと今年8月から、事業者が国に提出する運送引受書に、仲介業者に支払う手数料の記入を義務化した。不当な要求を外部に見えるようにする狙いだが、即効性があるかは不透明だ。

 交通局幹部は「2バース化で県内全体のクルーズ船客のバス需要が増えたとしても、公正な競争環境に戻らないと(県営バスの)受注増にはつながらない」と見ている。(岡部由佳里、華山哲幸)

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