香港「勇武派」先鋭化 警察と対峙、マスク姿の若者 破壊活動「未来のため」

西日本新聞 総合面 川原田 健雄

 香港で5カ月近く続く反政府デモの最前線で、警察と対峙(たいじ)するのが「勇武派」と呼ばれる若者たちだ。全身黒ずくめのマスク姿で、互いに素性を知らないまま現場で連携。全体で数千人に上るとみられ、店舗を破壊するなど行動を先鋭化させている。前線に立つ若者たちの思いを聞いた。

 「平和なデモでは何も手に入らなかった。香港が中国化する姿はもう見たくない」。勇武派として活動する大学生のホープさん(19)は静かな口調に力を込めた。長身で茶髪。一見おとなしそうな印象だ。

 6月以降、毎週末続くデモは昼間、平和な集会や行進が行われるが、夕方になると勇武派が道路の柵を外してバリケードを築き始め、警官隊との衝突になだれ込む。ホープさんは昼のデモに参加した後、商業施設のトイレでガスマスクなどを装着。身元がばれないようバンダナで耳も隠す。

 最前線では木製の盾を持ち、催涙弾やゴム弾から仲間を守る。足が速く、万が一の場合も逃げ切れるため、この役目を任せられた。催涙弾の直撃を受けても「拾って投げ返す」という。

 8月下旬には足を警棒で殴られ、捕まりそうになったが「仲間の助けで何とか逃げ切れた」。デモの後は警察の追跡を警戒し、遠回りして帰宅する。監視カメラをごまかすため化粧して眉の形を変えたり、偽のほくろを付けたりもする。

 9月には地下鉄駅のガラス戸をたたき割った。「7月下旬以降、駅構内で警察が市民に暴力を振るっても駅員は何もせず、出入り口を閉めて逃げ道をふさぐようになった。許せない」と憤る。中国系銀行の店舗も「大陸からの資金流入を防ぐため」破壊。デモ隊が信号機を壊したり、地下鉄の運行を妨害したりするのは「ストライキを呼び掛けても参加しない人が多いので、交通機関をまひさせるため」という。

 香港政府は抗議活動を「暴力行為」と非難する。だがホープさんは「政府支持の店舗を破壊はするが、金品は盗まない。暴徒ではない」と反論する。一方で政府や警察に対しては「人を殺しても、放火してもいい」と真顔で言い切る。

 10月には10代のデモ参加者2人が警官から実弾で撃たれ重傷を負った。「正直怖くなったけど、もう逃げ道はないと思うと肝が据わった」

 親には勇武派だと伝えていない。息抜きはゲームや友人との雑談。「週末も遊べず楽しくはないけど、香港のためだから」。逮捕されたら人生を棒に振るのでは、と問うと視線をそらした。「香港の未来がないのに自分の将来なんて…」

   ◇    ◇

 女性会社員のシルビアさん(30)も週末はマスク姿で最前線に向かう。催涙弾に水を掛けたり、負傷者を助けたりする役目だ。

 2014年の民主化デモ「雨傘運動」にも参加したが、幹線道路を占拠した若者がバーベキューをする姿を見て幻滅した。「まるでお祭り騒ぎ。目的を見失っているように見えた」。雨傘運動は市民の支持が続かず、結局失敗に終わった。

 当時の学生リーダーたちは今回「デモ支持」の立場だが、シルビアさんの思いは複雑だ。「知名度を生かして支援してほしいけど、出しゃばるのはやめてほしい。もう大物はいらない」

 長引く抗議活動。先行きが見えず、デモから離れようと考えたこともあった。しかし、衝突のテレビ中継を見るとじっとしていられない。「前線でみんなが助け合っているのに行かないわけにはいかない。香港人は冷たいと言われるけど、今は家族みたいに温かい。市民の支えがあるから戦える」と語った。 (香港で川原田健雄)

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