西日本文化賞  「面白い」こと「とことん」 

西日本新聞 オピニオン面

 「心底面白いと思ったことをとことんやってほしい」。2016年ノーベル医学生理学賞に輝いた福岡市出身の生物学者、大隅良典氏が繰り返し語る、若者へのメッセージである。

 科学に限らず、優れた仕事を積み上げる人の原動力は「面白い」という素朴な感情と、「とことんやる」覚悟に違いない。大隅氏にも贈られた西日本文化賞の本年度受賞者4人だ。その人となりと業績を見渡すと、つくづくそう思えてくる。

 西日本文化賞は、西日本新聞社の前身である福岡日日新聞社が1940年に創設し、地域の文化向上や発展に貢献した個人・団体に贈られてきた。第78回となる本年度の贈呈式がきょう、福岡市で行われる。

 学術文化部門に選ばれた九州大名誉教授の藤木幸夫氏は、昆虫採集や魚釣りに駆け回る少年だった。生命の謎を探りたい。そんな思いで細胞生物学を選んだ。「努力しないと結果が付いてこない」と研究に没頭し、細胞小器官の一つ、ペルオキシソームの基礎研究で大きな足跡を残した。大隅さんを含む研究仲間とつくった交流グループ「七人の侍」も続けている。

 社会文化部門は、薩摩藩を中心とした近世・近代史研究に取り組む志学館大教授で鹿児島県立図書館長の原口泉氏が受賞した。「地方の歴史を丹念に掘り起こす」面白さに熱中し、幾多の研究成果を残した。地域の歴史に触れる楽しさを、テレビ番組や公開講座で市民に伝えてきた。鹿児島の酒文化を探求する「焼酎博士」でもある。

 西日本文化賞は今年、両部門で有望な中堅若手をもり立てようと、奨励賞が新設された。

 学術文化部門は九州大応用力学研究所教授の竹村俊彦氏、社会文化部門は画家の田中千智氏がそれぞれ選ばれた。

 竹村氏は大気中にある微粒子の分布状況を、詳細に再現・予測する数値モデルを開発した。星を見ることが大好きだった少年は天文学の道を歩むために大学に入ったが、「社会に貢献したい」と気象学を選んだ。数値モデルは黄砂やPM2・5などの拡散予測に使われている。

 真っ黒に塗りつぶした画面にカラフルな油彩を描く「黒い絵」で知られる田中さんは、多摩美大を卒業後、郷里の福岡県に戻った。地方都市で専業画家として生きるという覚悟を胸に、アートイベントや公募展などで評価を得ながら、ファンを拡大してきた。幻想的な作品は書籍の表紙やCDアルバムのジャケットを飾っている。

 科学から芸術まで受賞者の業績は九州の「文化力」を示している。その努力に敬意を表し、さらなる活躍を期待したい。

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