カードすり替え盗被害急増 犯人から電話→通話中に偽警官→偽物と交換

西日本新聞 社会面 古川 大二 小川 勝也 森 亮輔

 まるでマジック-。捜査関係者が「カードすり替え型窃盗」と呼ぶ、偽電話詐欺被害が増えている。警察官をかたって高齢者宅に電話をし、用意させたキャッシュカードを別のカードとすり替えて盗み、現金を引き出す手口だ。福岡県では今年、前年同期比で3倍に増加した。県警は、高齢者を「思考停止」に陥らせ、現金を盗む卑劣な犯行に注意を呼び掛けている。

 カードすり替え型窃盗では、「かけ子」が高齢者宅に「詐欺グループを捕まえた。リストにあなたの名前がある」などと電話をかける。「カードの封印作業をする」と話し、キャッシュカードと暗証番号を書いた紙を用意させて「受け子」が訪問。封筒に入れる際に「印鑑が必要」と取りに行かせ、その隙に別のカードが入った封筒とすり替える。最後に「数日、封筒は開けないで」と念押しする。

 かけ子が「通話したままで」と電話を切らせないようにするのも特徴だ。「電話で注意を引きつけ思考停止にさせ、誰かに相談するのも阻む。封筒の中に自分のカードが入っていると思い込み、発覚も遅れる」。捜査幹部はこう指摘する。

 被害は1~9月で前年同期比3・2倍の58件(被害額8468万円)。60代以上が8割を占める。

 早良署が10月に窃盗容疑で逮捕した鹿児島県出水市の会社員の男(22)は受け子と盗んだカードで現金を引き出す「出し子」の2役だった。インターネットの闇サイトを見て応募し、封筒やカードは自分で用意した。「指示役から他県で盗んだカードを使い、福岡県内の現金自動預払機(ATM)で現金を引き出すよう言われた」と供述したという。

 県警は摘発を強化するが、逮捕した容疑者の多くは男のようにグループ末端。「月給平均200万~300万円」など闇サイトや会員制交流サイト(SNS)の高額収入をうたう募集につられ、「バイト感覚の若者が多い」(捜査幹部)。

 犯行グループは効率を上げるため、車1台にかけ子や受け子が同乗して巡回するケースもある。地区単位で一斉に電話をかけ、だませると踏むと受け子がすぐに訪問する。

 引き出した現金は駅のコインロッカーに預け、グループ上層部に渡るとみられる。県警は「暴力団の資金源の一つになっている。警察や金融機関がカードを受け取りに行くことはない。暗証番号は絶対に教えないで」と話す。 (古川大二、小川勝也、森亮輔)

   ◇    ◇

指示次々思考停止に 被害者

 「怪しいなと思ったんですけど、冷静に考える余裕はなかった」。キャッシュカードをだまし取られ、93万円を引き出された福岡県内の60代男性は悔やむ。

 8月下旬の午前、1人暮らしの自宅に警察官をかたる男から電話があった。すぐに金融庁職員を名乗る別の男に代わった。銀行口座から現金を引き出される被害に遭っていると話し、「キャッシュカードの封印が必要。カードを用意してください」と求められた。

 オレオレ詐欺被害が多いとは知っていた。「お金の話は詐欺」と警戒していたが、「カードのことだから大丈夫か」と油断した。

 男から口座がある金融機関を尋ねられ、五つ答えるとそれぞれ「補償番号」という数字を読み上げ、暗証番号とともに紙に書くよう指示された。追われるように手を動かしていると、若い男が自宅を訪れた。

 「身分証を見せてもらおう」。一瞬脳裏をよぎったが、電話の男から「電話を切らないで」と強く言われ、若い男の身分を確認する時間も奪われた。

 言われるがままカード5枚と暗証番号を記した紙を渡した。「印鑑も必要」と言われて家の中に取りに行き、カードが入った封筒に印鑑を押した。若い男は「しばらく保管してください」と言い残して立ち去った。電話の男も「再訪する」と電話を切った。

 「やはりおかしい」。すぐに電話の男に教えられた電話番号にかけたが、後の祭り。封筒の中には全く別のポイントカードが入っていた。午後になり110番したものの、既に現金が引き出されていた。

 「次々に言われることに対応するのが精いっぱいだった。まさか自分が被害に遭うなんて」。男性は言葉を絞り出した。 (古川大二)

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ