<35>脱毛の治療薬にはご用心

西日本新聞 くらし面

 誘蛾(ゆうが)灯のようなネオンサインにおびき寄せられ、時々夜の街におじゃまします。先日、元同僚3人で再訪したお店では、前と同じホステスさんが「初めまして」と言うので、「前も来たことあるっちゃけど。覚えとらんとぉ」と返しました。すると「髪形変えられました?」。2人は薄毛、1人はつるっぱげ。髪形を変えるほどの量はありません。はげトリオなのに記憶に残っていないなんて…。

 男性は思春期になると、体の中で男性ホルモンのテストステロンが増加します。その一部はジヒドロテストステロンに変化し、その影響でひげや胸毛、「ギャランドゥ」と呼ばれるへそまでつながる陰毛が生えてきます。ところが頭髪には逆の働きが。髪が十分成長する前にストップをかけ、頭髪を減らしてしまいます。日本人成人男性の約3人に1人がこのホルモンによる男性型脱毛症です。早い人では20歳代前半から薄くなり始めます。

 ずいぶん古くて恐縮ですが、1940年代に行われた、はげと男性ホルモンの関係を調べる実験では、(1)はげ進行中の人の男性ホルモンを減らすとそれ以上はげなかった(2)この人たちに男性ホルモンを増やすと再びはげが進行した(3)もともと髪がふさふさな人は男性ホルモンを増減しても髪の量に変化はなかった。つまり、男性ホルモンの働きで、はげる人とはげない人がいるということが分かったのです。

 はげはジヒドロテストステロンという男性ホルモンが体内に十分あることの表れ。だからスケベでないとはいいませんが、「はげはスケベ」と断定もできません。適度にスケベなはげもいますのでご安心ください。一方、髪がふさふさな男性は、体質的にはげにくい人か、もしかしたら男性ホルモンが少ない人かもしれません。

 男性型脱毛症を気にして薬を飲んでいる人はご用心。髪は増えるかもしれませんが、ジヒドロテストステロンを減少させる薬は性欲減退、精子・精液量の減少、ED(勃起障害)が起こることも。

 だから私たちはげトリオは、ホステスさんが気に入る見栄えではなくても、ありのままを重要視しています。 

 (泌尿器科医・池田稔)

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