外国人実習 支えは同僚 おむつ交換教材動画制作  大川の介護施設

西日本新聞 一面 吉田 真紀

 外国人技能実習制度の対象職種に、初の対人サービスとなる「介護」が加わって2年が過ぎた。厚生労働省などによると、日本への入国に必要な実習計画の認定を受けたのは9月末時点で5278人。九州では、人材不足が慢性化する介護現場で180人以上の実習生が働いているとみられる。8月にベトナムから実習生3人を迎えた福岡県大川市の社会福祉法人「道海永寿会」(山崎一幸理事長)の介護老人保健施設で働くタオさん(22)と、支える職員の一日に密着した。

 医療系短大卒のタオさんは、法人提供の民家で、別の施設に配属されたジュさん(24)、フォンさん(21)と暮らす。受け入れ担当の山崎律美総所長(71)は「地域の住人になるので、入居時は3人を連れて近隣にあいさつしました」。タオさんは週5日計40時間の勤務。手作り弁当を持って、自転車で施設へ通う。

 午前9時前 「体操します」。タオさんと一緒に、車いすの利用者も体を動かす。担当する2階には60~100歳代の52人が入居。食事の形態や薬がそれぞれ違い、顔と名前の把握は重要な仕事だ。タオさんを指導する中島宏子係長(38)は「ひらがなを振った食事時の座席表を作る工夫をしました」。タオさんは「3日で覚えた」という。

 同9時 前日夜勤者からの引き継ぎ事項が伝えられる朝礼に参加。タオさんは介護職種の実習生の入国要件となっている日本語能力試験「N4」の一つ上の「N3」に合格しているが「褥瘡(じょくそう)」「直腸診」など専門用語が多く報告者の話すスピードも速い。中島さんが素早くフォローする。

 同9時20分 「今からおむつ交換。一番好き」。施設はタオさんのために介護技能を映像で学べるDVDを自主制作するなど、一から指導してきた。52人の交換を経験し、半月前に全員分の合格をもらったタオさんは「寒い? 早くしますね」と会話をしながら作業。中島さんは「タオさんに指導したら、理解したか、しなかったか、はっきり返事してもらっています」。ほかの職員たちも「大丈夫?」と、タオさんに、こまめに声を掛けていた。

 「職員全員で実習生を受け入れる、という共通認識を持ってもらったのが大きかった」と山崎総所長。受け入れに先立ち、全職員を集め、実習生が生まれ育った環境や、懸命に勉強して来日する背景などを説明した。「実習生は低賃金で働かせられる外国人という偏見があったが真剣さに驚いた」「日本人の新人と同じように育てたい」など、意識の変化があったという。

 午後1時 昼食介助を終えて昼休み。母国では約1時間寝る習慣があるといい「15分寝ます。元気になる」。中島さんは「利用者に受け入れられるかという不安は取り越し苦労でした」。明るいタオさんに、利用者は「遠くから偉かね」と目尻を下げていた。

 同4時 午後の業務が一段落すると、実習日誌に、この日学んだことなどを記入。「今日、私は、りようしゃさんにテレミン(下剤)をいれてあげました」。中島さんが添削し、業務内容を一緒に復習する。タオさんのSOSをキャッチする時間でもある。以前「腰が痛い」と訴えたタオさんのために施設の理学療法士が腰痛予防の体操メニューを考案した。

 1年後の目標は夜勤。中島さんは「夜勤は利用者の突然の呼び出しにも対応する。臨機応変さが必要になるので訓練します」

 同6時 終業し帰宅。カボチャの炒め物などの夕食後には漢字の勉強。日本人の新人と同額の給料をもらうタオさんは「2万円は私、あとはベトナムで大工をする両親に送ります。毎日楽しい」と笑った。

 法人は継続的に実習生を受け入れる計画で、山崎総所長は「実習生を同僚として迎え、日本人と同じ教育をし、細かな配慮ができる人材に育てたい。過ごしやすい環境をつくり、実習生に『選ばれる施設』を目指します」と話した。 (吉田真紀)

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