良い食品って何だろう 小さな店営む熊田さん こだわりを本に

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 安全・ごまかさない・味が良い・妥当な価格

 名古屋市で小さな食品店を営む熊田博さん(70)が、自身のこだわりの商品に託す思いをつづった「良い食品には物語がある」(風媒社)を出した。安全に作ったごまかしのない食品を、リーズナブルな値段でおいしく食べてもらう-をモットーに、九州を含む全国の業者らと歩んで30年余。「百点満点の食品はなかなかありませんが、それを目指して努力を重ねる思いを、消費者に知ってもらえたら」と話す。 

 熊田さんは、江戸時代に名古屋城に油を納めていた商家「熊野屋」の11代目。戦後、父が食品を扱い始めた。会社勤めをしていた1977年、「食品を見わける」(磯部晶策著、岩波新書)という本に出合う。

 磯部氏は大量生産・大量消費時代の食の在り方に疑義を唱え、消費者にとって良い食品は「安全で安心して食べられる」「ごまかしがない」「味が良い」「品質に応じて妥当な価格」-の4条件が必要と指摘していた。これに共感し、磯部氏らから食品の基本を学んで85年、家業を継いだ。

 扱うのは、みそ、しょうゆ、油、塩や砂糖など基本調味料をはじめ、米に小麦粉、卵やハム、ラムネに豆菓子など多彩。いずれも生産者と直接交流し、4条件に照らして納得した品だ。

 長崎県の「チョーコー醤油」とも古い付き合いという。「みそやしょうゆなどは、その土地ならではの味があります。かつて愛知の紡績工場には九州から就職した人も多く、古里の味だと喜んでもらえて」

 大きな商いではない。なじみ客が途切れることも。不思議と人のつながりで新たな客が現れる。「妥当な価格」は近隣のスーパーより割高でも「裕福じゃないけど食品だけは別というご家庭があるんですね」。

 全ての人が毎日の食卓を「良い食品」で、というのは確かに難しい。「せめて私たちは、安くて簡単、便利ではないけれど、4条件を満たすべく作られた食の選択肢を、絶やさないようにしたいのです」

 著書は、そうした思いを食品ごとにつづった。交流のある全国の生産者や販売店の一覧表付き。1650円。熊野屋=052(931)8301。 (長谷川彰)

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