【ラガーマン記者が読み解くW杯・番外編】 取材最前線に聞いた「ジャパンの強さ」 (3ページ目)

西日本新聞 入江 剛史

◇「塔」から「山」を目指せ

-日本ラグビーは今後、どうなるだろうか。

「日本代表が準々決勝で南アフリカ代表に敗れた直後のこと。選手たちを取材すると、目標のベスト8を実現した達成感はあったが、満足感はなかった。流選手は「アイルランドにもスコットランドにも勝つ準備は完璧にできたと思うが、準々決勝で勝つマインドまでは正直つくれなかった」というような話をしていた。ベスト8までの準備は入念にしたが、その上に行く準備は十分にできていなかった。その準備と体力があれば、南アにも勝てたという思いがあったのではないか」

 「日本代表選手31人のうち、試合に出たのは26人。優勝した南アフリカやイングランドなどのように、決勝トーナメントを見据えてメンバーを大幅に入れ替え、主力を温存する余裕はなかった。常にベストメンバーで戦い続け、それが疲労という『ガス欠』につながった。競技人口の裾野を広げ、さらなるレベルアップにつなげないと、ベスト8を維持すること、ベスト4に進むことは難しいのではないか」

総括会見に臨むラグビー日本代表の選手ら=10月21日午前、東京都港区(撮影・中村太一)

 「エディージャパンは、分かりやすく言えば、戦術に合うトップレベルの選手をつまんで、集中して鍛え上げた。トップレベルの層だけが浮いている感じで日本ラグビー界全体の広がりはあまりなかった。ジョセフジャパンになって選手層に一定の厚みが出て塔のような形になっていると思う。ただ頂上をさらに高くするには、裾野が広い山のような形にしないといけない」

◇ラグビーを「やる価値」

-ジュニアラグビーの体験希望者が増えている。

 「このチャンスを逃したくない。会場を訪れた小さな子ども連れの保護者や、妻にも聞いたが、『ラグビーは野球やサッカーより面白い』という。でも『子どもに本格的にやらせるかと考えると二の足を踏む面がある』と…。血が出てるし、痛そうだし、子どもたちのラグビーでは安全性をどう確保するかが大事だ」

-ただ、競技の特性から絶対的な安全はない。多少のけがのリスクはあっても、やる価値があると認めてもらえるかどうか。

 「W杯で広がったラグビーの価値を伝えることが普及につながるのかもしれない」

-体が小さい人も大きい人も、足が速い人も遅い人も、器用な人もそうでない人も。15ものポジションがあるから、どこかに居場所がある。互いの強み弱みを認め合ってチームになる。

地面に敷いたマットの上で、トライを体験する子ども=10月28日、大分市(撮影・井中恵仁)

 「自分に居場所があり、人に理解してもらえる世界があるのは大切。子どもたちが豊かな生活を送るための一つに、ラグビーがなったらいい。今日は水泳、明日はラグビー、雨が降ったらゲームでもいい」

 「使い古されたボールでいいから、学校とか公園とか身近に楕円(だえん)球がある環境ができたらいい。『あっ、テレビで見たボールや』って触ってくれるといい。そしていつか、国籍が違う子どもたちが交じって、そのへんの草っぱらでラグビーが楽しめるような日がくるといいなと思う」

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 おおくぼ・しょういち 大阪府出身。テレビドラマ「スクール☆ウォーズ」をきっかけに中学からラグビーを始め、フッカーを務める。センターに転向した大阪・四條畷高では全国大会府予選の準決勝で、後に日本代表スタンドオフとなる島本高の広瀬佳司氏にしがみつくタックル。その写真が家宝となっている。西日本新聞入社後は運動部に所属し、プロ野球ソフトバンク担当などを経て、前回W杯前からラグビー日本代表の取材に力を入れる。46歳。

大会を振り返る大窪記者(左)と入江記者(撮影・福間慎一)

 

 いりえ・つよし 福岡高でラグビーを始め、早稲田大でスクラム最前列のプロップとして公式戦出場。西日本新聞入社後は勤務の傍ら、旧朝倉農業高(福岡県)、福岡高、大分東明高などでコーチを務める。ラグビーW杯日本大会を1年後に控えた昨年夏、九州で唯一、キャンプ地にも試合会場にもなっていない佐賀に赴任。ただ、小学生の息子が「佐賀ジュニアラグビークラブ」でラグビーを始め、週末の練習が楽しみで仕方がない。録画した試合を見ながらの晩酌がほぼ日課。46歳。

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