「命の分断」社会にまん延 災害とホームレス、NPO「抱樸」理事長に聞く

西日本新聞 社会面 内田 完爾

 大きな被害が出た10月の台風19号では、東京都台東区が自主避難所を訪れた路上生活者(ホームレス)の受け入れを拒否し、追い返す形となった。大規模災害が各地で相次ぐ中、九州の自治体にとっても人ごとではない。「災害弱者」をどう支援すればいいのか。長年ホームレスを支援してきたNPO法人「抱樸(ほうぼく)」(北九州市八幡東区)は炊き出しのテントに「おんなじいのち」と書いている。奥田知志理事長(56)は経済格差が拡大する中で、命の価値に「分断線」が引かれていると指摘する。

 -台風が首都圏に近づいていた10月12日午前、自主避難所を訪ねたホームレスの男性3人が住所がないことなどを理由に受け入れを拒否された。服部征夫区長は後に「マニュアルに沿って対応したが、路上生活者への対応を定めていなかった」と釈明した。

 「災害時にホームレスを追い返すのはあってはならないことだ。役人はルールに従って動いているが、非常時にはマニュアルが機能しないことが多い」

 -この避難所では、外国人や区外の住民は現場判断で受け入れていたと報じられている。

 「経済格差が拡大し、自己責任論が強調されている。ホームレスなんて助ける必要がないという空気が社会にまん延し、『大事にする命』と『どうでもいい命』という分断線が引かれている。台東区の対応の背景には、そうした空気があるのではないか」

 -北九州市の自主避難所は住所に関係なく避難者を受け入れ、過去にはホームレスを受け入れたこともある。そうした中で加えて、奥田さんたちは台風などでは事前に市内を巡回してホームレスの支援施設に避難するよう呼び掛けている。

 「現実問題として被災した地域住民などが、お風呂に長く入れていない人たちと避難所で一緒に過ごすのはハードルが高い。ホームレスに限らず避難する人の中には、ケアが必要な人は少なくない。ただ受け入れるだけではトラブルになりかねない。避難所で『ホームレスを断ってはいけない』と決めるだけでは行政も対処できない」

 -台東区にもホームレスの支援団体はあるが、今回は行政が支援をつなぐことができなかった。

 「行政だけでできることは限られており、民間の支援団体と行政が協働体制をつくり、地域全体で対処するほかにない。北九州のように官民一体で対処する態勢を全国で整えるための指針を国は出すべきだ。そうした議論につなげなければ、台東区の対応を批判するだけでは意味がない」 (聞き手・内田完爾)

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