野山を歩き植物に親しむ

西日本新聞 くらし面 川口 史帆

 紅葉がちらほら見え始めました。山登りの経験はありませんが、運動不足解消のためにも身近な野山を歩いて秋の植物を観察したいです。どのように楽しめばいいでしょうか。

 猫の小町と申します。自然体験学習の講師活動などに取り組むふくおか森林インストラクター会の、溝口澄子さん(79)に案内していただき、佐賀と福岡の県境にある九千部(くせんぶ)山の九州自然歩道を歩きました。

 歩道の足元はふかふかした腐葉土と、粘土、岩場が不規則に現れます。斜面沿いでも手すりとなるロープがない部分が多く、足を滑らせないよう慎重に進みます。

 頭上は枝葉に覆われて薄暗いですが、太陽光が当たる部分の葉はステンドグラスのように透け、朱色や黄色、薄緑色に浮かび上がって見えました。

 庭木としても親しまれているコハウチワカエデは11月下旬にかけて鮮やかな赤色に染まります。シラキの赤色やシロモジの黄色も、九州の山で多く見られます。全ての木の葉が色づくわけではなく、紅葉するのはこのような落葉樹だけ。スギやクスノキといった常緑樹は緑のままです。その場所にどんな木があるのか、事前に調べるとよさそうです。

 溝口さんによると、標高などで差はあるものの、今年の九州は11月中旬~12月頭ごろが見頃になるそうです。人気スポットの色具合を伝えるウェブサイトもあります。

 「この季節、楽しめるのは葉っぱだけにあらず」と溝口さん。足元を気にしながら歩くと、白や薄紫色のノコンギクなど小さい花に気付きます。赤やオレンジ色の粒が集合したマムシグサ、紫色のビーズのようなムラサキシキブといった個性豊かな実を見られることからも、秋は野山歩きに最適なのだそうです。

 気軽に散策できるような低い山でも、油断は禁物。1人で行くのは避けた方がいいです。服装は長袖長ズボン、歩きやすい靴で。強い日差しがないときも、帽子があると枝などから頭を守ってくれます。荷物はリュックサックにまとめると両手が使えて身軽。山の天気は変わりやすいので、雨具の準備も忘れずに。

 草花に夢中になると、つい時間を忘れてしまいがちですが、午後は日が傾く前に帰路に就きましょう。近くで観察したくても、歩道をそれて進むと道に迷う危険性があります。見える範囲で楽しむ工夫が必要です。

 背の高い木や離れた場所を観察するときには、双眼鏡が役立ちます。ルーペがあれば、小さな花の構造や落ち葉の葉脈まで知ることができます。

 きれいな草花に出合うと、持ち帰りたくなるかもしれませんが「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」と溝口さん。森林愛好家の合言葉なのだそうです。

 約3時間の山歩きの途中では腰を下ろしてお茶を飲んだり、チョコレートで栄養補給したりも。無理の無い範囲で余裕を持って歩くのが、野山を楽しむ一番のポイントだといいます。

 ライトアップや遠景で観賞する紅葉も美しいですが、間近に見ると「冬の寒さに備え、春へ向けて新しい命を結ぶ、植物たちのけなげで美しい営みに触れることができますよ」と溝口さんは話しています。

 お助けいただき、ありがとうございました。 (川口史帆)

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