タイトル作り方から使い方まで囲炉裏のすべてを徹底解説する「囲炉裏の事典」

西日本新聞

 都会暮らしでは、日常の生活の中で裸火に接する機会はとても少ない。せいぜい青白いガスコンロの炎を見るのが関の山で、赤々と燃える薪の火どころか、落ち葉を集めた焚き火でさえ見ることはまれになってしまった。それだけに、太古の昔から火とともに暮らしてきた私たちは、心のどこかで炎を欲していて、囲炉裏にはそうしたノスタルジックなイメージがある。

 山での暮らしを選択したこの本の著者は、はじめカマドを調理や暖房の手段として使っていたのだが、まもなく囲炉裏の素晴らしさに開眼する。使い方次第であらゆる調理法に対応し、囲炉裏の直火は芯から体を温める暖房法としても優れたもので、その上に薪の消費量はカマドより格段に節約できることがわかったからである。そして夏でも囲炉裏に休むことなく火を入れ続けることで、室内は乾燥し防虫・防カビ・防菌ができるという。さらに驚いたことには、囲炉裏の火に向けて対流が起きて屋外から涼しい風が吹き込むのだそうだ。

 こうした囲炉裏の素晴らしさを、ノスタルジックに語ることが本書の持ち味ではない。もっと実践的な「囲炉裏の事典」といってもよい内容だ。まずは囲炉裏の作り方。囲炉裏の使い方が懇切丁寧に説明されていることはもちろん、囲炉裏をどうやって作るか、そこから具体的に説明されている。そして囲炉裏の周辺に必須な道具たち、例えば、自在カギ、ゴトク、火吹き竹に火消しツボの紹介、使い方、入手法まで至れり尽くせりだ。そして囲炉裏を使う料理の仕方についても詳しい解説がある。こうした一連の内容が文章で綴られるだけではなく、著者自身の手書きによるカラーのイラスト、そしてカラー写真が豊富に添えられていて、それを目で追う楽しさもある。

 著者は「薪火」という言葉を使うが、これは焚き火と炭火をひっくるめた意味で、著者による造語である。囲炉裏以外の薪火として、本書では炭を使う火鉢や七輪、あんか、それに薪を燃やすカマドにロケットストーブまで、その特徴や使用法、製作法まで触れられている。スイッチひとつで火を点けたり消したり火力を調整することにすっかり慣れきってしまった都会人が、囲炉裏のある生活にチャレンジすることは難しいかもしれない。しかし、囲炉裏を囲む生活に少しでも憧れを抱くのであれば、本書を手にしてみる価値は十分にある。それほどに囲炉裏と薪火の魅力を力強く訴えてくる本である。

 

出版社:農文協
書名:囲炉裏と薪火暮らしの本
著者名:大内正伸
定価(税込):2,860円
税別価格:2,600円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54012162/

西日本新聞 読書案内編集部

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