「勉強しなさい」と言う代わりに、親が子どもにするべきこととは?

西日本新聞

 子どもを持つ親なら、一度は子どもに向かって「勉強しなさい」と言ってしまったことがないだろうか。けれど周囲を見渡してみると、成績優秀で羨ましくなるような子どもを持つ親は決まって、「勉強しなさい」と言ったことはないという。子ども全員をすべて東大へ合格させたという母親も、著書やテレビで同じようなことを言っていた。子どもの学力は、その子が生まれ持ったものだけが重要なのではなく、親の接し方次第でいくらでも伸びるということなのだ。

 本書は、まさにその学ぶ力を伸ばす方法について書かれている。著者は、東大合格者数日本一を続けている進学校として有名な、東京の開成中学・高校の校長でもあり、東大名誉教授。易しい言葉で明快な文章ながら、的確でかつ重みのあるアドバイスが並ぶ。それらは、勉強についてというよりも、子育てそのものについての確かな指針に満ちていて心強い。

 例えば子どもの褒め方。褒めて伸ばすというが、ただやみくもに褒めるのではなく、伸ばすためにはちょっとしたコツが必要なのだ。また、子どもに対して、きょうだいや友だちと比較することは一般的にはしてはいけないと言われている。しかし、子どもの成長を過去と現在で比べる「垂直比較」という方法であれば、子どもを褒めることに繋がるし、自信を付けさせることができるのだ。

 他にも、「知識の量と質」の関係や「時間の重みと年齢」の関連性についてなど、著者の広く深い知識と経験からくる数々の見解は、読む者の胸にストンと落ちるように理解させてくれる。もちろん現代の親が一番知りたいであろう「携帯とゲーム」についてや、「受験」についての教育論も展開されている。しかし本書を通して最も重要なメッセージは、わざわざ親が子どもに勉強を教えなくても、それ以外に親ができること、やるべきことはたくさんあるということなのだ。

 なんとなくその存在を感じていた「成長のS字カーブ」も、明確にしてもらえて納得。いくつになっても人間は成長できることを知れば、大人自身にも喜ばしいし、もし子どもが成人していても遅くはない。たとえ時間はかかっても、誰でも「尖った部分」を大事に個性を伸ばし、充実した人生を送るための希望を持つことはできるのだ。できれば、子育て中の人に限らず、ぜひ幅広い人に読んでほしいと願う一冊である。

 

出版社:中央公論新社
書名:子どもに勉強は教えるな
著者名:柳沢幸雄
定価(税込):1,540円
税別価格:1,400円
リンク先:http://www.chuko.co.jp/tanko/2019/10/005241.html

西日本新聞 読書案内編集部

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