強烈エピソードに唖然。コンパクトだけどダイナミックな三国志入門書

西日本新聞

 三国志。もちろん知ってはいる。興味もあった。友人や知り合いから勧められたことも一度や二度ではない。「衝撃的な面白さ」「泣いた」「ビジネスの役に立つ」等々の評判も見聞きする。なんなら書店で本やコミックを手に取ったことまである。しかし、読むまでには至らなかった。長すぎて・・・。

 という、私と同じ境遇の方にお勧めなのが本書である。「人」「戦」「社会」を軸に選ばれた51個のキーワードを通して、三国志の壮大な世界観を堪能できる一冊だ。コンパクトながら丁寧な著者の説明によって、物語の社会的背景や時代の雰囲気を知ることもできる。すでに作品を読んだことがある方も、新たな魅力に気付かされるのではないだろうか。 

 しかし、なんと個性的な登場人物ばかりなのだろう。私でも名前くらいは知っている劉備(りゅうび)がこんなに泣き虫だとは知らなかった。言葉遊びが巧みすぎたために嫉妬を買い、殺された人物なんてのもいる。何度失敗を重ねても酒をやめようとせず、ついに大事な戦いの直前に酔っぱらって寝てしまい、部下に暗殺された張飛(ちょうひ)など他人とは思えない。さすがに泥酔した隙に城を乗っ取られるという失態をおかした時点で懲りるべきだったとは思うが。

 武将だけではない。投獄されても分身や変身の術を使ってあっさりと脱獄する超能力者がいる。スパイは現代で言うところのフェイクニュースをまき散らし、敵を攪乱(かくらん)させる。そして男以上に強烈なエピソードを持ち、あの「悪人のきわみ」曹操(そうそう)でさえも手を焼いたという、烈女や猛女と呼ばれる女性たち。本編を読んでもいないのにこんなことを述べるのは気がひけるが、本書でその端緒に触れただけで、三国志という物語の持つダイナミズムに圧倒されてしまう。

 幸いにも三国志の世界は、小説や漫画など、たくさんの入り口が用意されている。読書の秋だからというわけでもないが、本書をきっかけとして、その長大にして波乱万丈な物語に浸ってみるのもいいかもしれない。もちろん私はそうするつもりだ。

 

出版社:潮出版社
書名:キーワードで読む三国志
著者名:井波律子
定価(税込):866円
税別価格:787円
リンク先:http://www.usio.co.jp/books/ushio_bunko/19407

西日本新聞 読書案内編集部

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