【劇評】おしゃべりに宿る警句 ホールブラザーズ「女の幸せ」

西日本新聞

 福岡市を拠点に活動する劇団「HallBrothers」(ホールブラザーズ)の20周年記念公演の第4弾「女の幸せ」が11月1日から4日間、福岡市博多区のぽんプラザホールであった。ドラッグストアのバックヤードを舞台に、店長と店員たちの人間模様とおしゃべりを通じ、結婚・出産が女性の幸せか、掘り下げて問い掛けた。

 新任の店長フジシマは、著名人の人生訓を持ち出し訓示しては細かく指示を出し、店員たちからうるさがられる存在。しかし、「普通に幸せがいい」と言う店員アイは、そのまじめさを好み結婚する。フジシマも「家族持ちは信用される」とあくまで手堅い。

 一方、結婚を機に退職したアイの後任店員となった妹メイは、退職後も店に姿を見せ、小言を言う姉を嫌う。「ザ・平均」で「みんながこうするから」と大勢に順応する姉の生き方にも我慢がならない。「自分がない」と映るからだ。「結婚・出産が当たり前」という言葉にはらむ「正しさ」の押し付けがましさがいやだ。そして、メイは、店員生活の現実と裏腹に仮想通貨での投資話を語って「すごい人生」を夢見る男性店員ジュンに引かれ、恋に落ちる。

 女性店員たちの結婚観はそれぞれだ。「女だから」と結婚願望を認める女性がいれば、「周りに失敗(離婚)する人も多い」と言いつつ「相手があれば。子どもがかわいいから」と結婚を拒まない女性もいる。オタク系だろうか、ゲームが趣味の女性は「結婚だけが幸せじゃない」と語る。男性店員たちも交じって、幸せ論争に終わりはない。車の改造にお金をつぎ込むベテラン店員は「出世頭は心と体を壊して辞めた」「好きなことをやり続けるのが一番」と言う。

 ◆日常の暮らしと地続きのところから

 両極端の姉妹に皮肉なてんまつが訪れる。メイの妊娠が発覚する。望んだわけではない。どうするか。ジュンは戸惑う。一方、出産を願って夫と努力するが妊娠できないアイは激しく取り乱して号泣する。

 それぞれの店員たちに感情移入したくなる舞台だ。どこかで見る側と重なるところがあると思う。ひりひりしたり、共感したり、つい笑ってしまったり。思わず自分の来し方を振り返らずにはいられない。アイの号泣には、多くの人が大なり小なりため込んでいるであろう、どうにもならないある種の絶望を解放し、すっきりさせるカタルシスへ導く力があった。

 いたずらに人と比べ、ある考えに固執して視野狭窄(きょうさく)になると、どんな生き方を選んでも生きづらくなる、それは幸せなことか、というふうな警句を、役者の何げないおしゃべりとしぐさの中に見いださせるところが、劇団主宰者で脚本を書いた幸田真洋の仕掛けだろう。

 劇には、2人目の子を宿し、おなかが大きくなった幸田の妻で劇団員の萩原あやが、妊娠した店員役で出演していた。日常の暮らしと地続きのところからリアルな舞台をつくる劇団の持ち味を、そのまま体現していて興味深かった。(吉田昭一郎)(敬称略)

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