「まゆちゃん、絵本になったね」 8歳で旅立った娘の夢、母がかなえる 北九州市

西日本新聞 社会面 西山 忠宏

 偉人の伝記を読み、「本に載るような人になりたい」と夢を語りながら、小児がんのために8歳で他界した長女まゆさんが主人公の絵本「かぜにのって」を北九州市八幡東区の井上直美さん(50)が完成させた。まゆさんが病気と闘いながら懸命に生きた最期の2年間を平仮名中心でつづり、福岡県岡垣町のイラストレーターうえむらようこさんが絵を担当した。まな娘の夢をかなえた直美さんは「まゆは天国で跳びはねて喜んでいると思う」と話す。多くの人に絵本を読んでもらい、娘のことを知ってほしいと願っている。

 自転車、キックスケーターなど外遊びが大好きだったまゆさん。チャームポイントの笑顔が消え、こわばった顔つきになったのが小学1年だった2016年の秋。活発さがなくなり、頭痛も訴えた。

 複数の医療機関を回って分かったのが悪性脳腫瘍の「脳幹グリオーマ」を患っていること。「放射線治療しかないが、効かないことも」「余命は1年」…。医師の言葉に、直美さんも夫の真二さん(43)も信じられない思いだった。

 大学病院に入院して放射線治療を受けた。元気を取り戻し、2年の春から普通に学校に通い、運動会のかけっこで1番になったり、水泳を楽しんだりした。エジソンら偉人の伝記を読み「私も本に載る人になりたい」と、目を輝かせたのもそのころ。でも夏が終わると再び病状が悪化し、体にまひが生じた。また遊びたいと治療を頑張ったが18年10月15日、永眠した。

 「まゆは一度も病気について聞いてこなかった。聞くと私を悲しませると思ったからでしょう」と直美さん。「天国へ旅立つ約1カ月前、まゆは『お母さん、私が大きくなっても一緒に寝てくれる?』と尋ねてきた。これから自分がどうなるのか不安で仕方なかったと思う」とも語る。

 絵本作成は、まゆさんへの訪問看護を担ったNPO法人にこり(岡垣町)理事長の松丸実奈さん(41)から勧められたのがきっかけ。松丸さんは「絵本が、井上さんの支えになると思った」と話す。

 絵本は37ページ。うえむらさんが3冊を手作りし、今後出版も考えている。直美さんは「図書館や小学校などに置いてもらえれば」と話している。(西山忠宏)

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