札幌でマラソン 五輪の将来像を描き直せ

西日本新聞 オピニオン面

 来年の東京五輪のマラソンと競歩を札幌市へ移すことが正式に決まった。選手や観客の健康面を最優先し、都内の酷暑を避ける判断は妥当だとしても、今回の一連の騒動は、五輪のあり方を考える上で多くの課題を浮き彫りにしたと言える。

 まずは移転される男女のマラソンと20キロ競歩、男子50キロ競歩の計5レースが滞りなく実施できるよう、札幌市や東京都など関係団体が一丸となり準備に最善を尽くすことを望みたい。

 特に準備の見直しを迫られる選手にとって一番の不安要素はコースと日程だろう。「大観衆で埋まる新国立競技場にゴールしたかった」といった今回の移転に納得できない声も根強い。早期にコースと日程を確定し、選手の思いに報いるアイデアにも知恵を絞ってほしい。

 今回の移転を巡る騒動で最初に表面化したのは、都と大会組織委員会の溝の深さだ。小池百合子知事が移転計画を知ったのは国際オリンピック委員会(IOC)の公表前日だという。「小池外し」との声もある。

 移転を正式決定したIOC、都、組織委、政府の4者協議で知事は「合意なき決定だ」と悔しさをにじませた。これでは「ワンチーム」の大会運営など望めない。4者の信頼関係修復は五輪成功に不可欠で、大きな責任があると指摘したい。

 さらに、強く再認識させられたのが、あらゆる問題の最終決定権はIOCにあるという事実である。開催地や組織委は最終的には従うしかない。

 日本の夏の猛暑は近年毎年のことであり、もっと早い段階で何らかの問題提起をすべきだったと考える。その意味で混乱の最大の責任はIOCにある。

 今回の騒動が突き付けた最も深刻な問題は、もはや夏季五輪を北半球の真夏に開催することは限界に近いという現実だ。

 地球温暖化によるとみられる気温上昇の影響は、今後の開催都市である2024年パリ、28年ロサンゼルスとも無縁ではない。例えばパリでは今年7月、過去最高の42・6度を観測するなど酷暑は深刻だ。IOCは今回の教訓を生かし、パリとロスの大会の開催時期や実施競技のスケジュールについて再検討するべきではないだろうか。

 IOCにはこの際「選手第一」の原点に立ち返り、持続可能な五輪の姿を描き直すことを求めたい。莫(ばく)大(だい)な費用負担の問題もあり近年、開催に立候補する都市は減少傾向にある。広域での分散開催や競技種目により時期をずらす方法も考えられる。収入を放映権料に頼り、米国のテレビ局の都合で8月開催が避けられないという現在の姿は持続可能なのか、議論が必要だ。

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