認知症 料理で笑顔 カフェ営む鈴木さん、古賀市で交流会企画

西日本新聞 社会面 今井 知可子

 認知症の父との暮らしは大変でしたかって? いえいえ、とてもかけがえのない日々でした-。福岡県古賀市でハーブカフェを経営する鈴木菜穂子さん(56)は、亡き父とダウン症の娘によるかみ合わない会話に毎日笑わされ、元気をもらったという。「同じような境遇の人たちで集まり、笑い合えたら」。認知症の高齢者とその家族が料理をしながら交流するイベントを、9日を皮切りに企画、参加を呼び掛けている。

 10年前、同市にハーブ料理店を出した鈴木さん。ほぼ同時期に認知症の父を引き取った。長女の星香さん(26)はダウン症で、父とはお互いに誰なのか分からないまま一緒に暮らすことになった。仕事と介護に追われ、押しつぶされそうな毎日。そんなとき、「漫才のような」父と娘の会話がささくれだった心を癒やしてくれた。

 父が「きょう何曜日」と聞く。「水曜日」と答える星香さんに、父は「ばか、きょうは木曜だよ」。忙しい月曜の朝、そんな2人の会話を耳にして噴き出した。「どっちも違うってば」

 父がふさぎ込んでいる日は、星香さんがそばに行って頭をなでる。父が星香さんの頭をなで返す。見ていて気持ちが安らいだ。

 一昨年、84歳の父をみとることができた。苦労も多かったが、認知症の父と暮らした年月は幸せだった、と今でも思う。

 父と娘の掛け合いが始まった頃、常連客の70代夫婦の妻が認知症になった。料理ができず困っている夫。鈴木さんは自分が開く料理教室に「お二人でどうぞ」と誘った。

 妻は手順を忘れていて、最初はぎこちなく包丁を握った。だが、回を重ねるうちに包丁さばきを思い出したのか、あるとき、ものすごい速さでみじん切りを始めた。ハーブの香りに「いい匂い」と笑顔も。翌日には料理教室に行ったことすら忘れていたようだが、「あんな笑顔を一瞬でも見られるのなら」と今回のイベントを思い立った。

 イベントは9日午後1時半から、古賀市のリーパスプラザこが。14、21、28日も開く。一家族3千円。

 香り豊かなハーブを使い、パンケーキやカレーなど味の失敗が少ない料理を作る。テーブルにはボランティアの看護師や介護士約10人が交じり、星香さんも参加予定だ。「認知症さんと配偶者、お孫さんなどいろんな組み合わせでどうぞ。障害者とご家族ももちろんOKです」。 (今井知可子)

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