レンシー氏の帰国暗礁 カンボジア元野党党首

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】カンボジアで解党処分となった元最大野党党首で海外逃亡中のサム・レンシー氏が表明していた約4年ぶりの帰国計画が、暗礁に乗り上げている。フランスからタイに8日到着する航空便への搭乗を拒否され、9日にタイから陸路帰国することが難しくなったためだ。マレーシア当局もタイに向かう途中の元副党首を一時拘束。反政府活動を押さえつけるカンボジアの強権的な手法を、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国が結果的に追認する形となった。

 カンボジア救国党の共同創設者であるレンシー氏は8月、帰国計画を表明し、事実上の独裁を強めるフン・セン首相の退陣と民主主義の復権を掲げ、国民や治安当局の蜂起を呼び掛けた。いったんタイに入り、カンボジア独立記念日の9日、同じく海外逃亡中の元党幹部やカンボジア人とともに、タイ国境からカンボジア北西部ポイペトに入る計画だった。

 7日、パリの空港でタイに向かう便に搭乗しようとしたものの、タイの航空会社が拒否。記者団に「ショックだ」と語ったが、同日、会員制交流サイト(SNS)で、別の経由便を探して陸路での帰国をなお目指す考えを強調した。フランスとカンボジアを結ぶ航空便はあるが、レンシー氏側はメディアや国際社会の注目を集めやすいタイからの陸路帰国を果たし、正当性を訴える狙いがありそうだ。だが状況は難しい。

 フン・セン首相にとって、レンシー氏は最大の政敵。今年に入って救国党関係者ら40人以上を逮捕。レンシー氏らの帰国を「クーデター」とみなし、入国すれば即逮捕する方針で、ASEAN各国にも逮捕状を送って協力を要請。タイ国境には軍も配備している。

 これに対し、タイのプラユット首相は6日の記者会見で、内政不干渉をうたうASEAN憲章に触れ「反政府活動を行う人がタイを利用するのは認められない」と表明。マレーシア当局も同日、クアラルンプールの空港で、帰国に同行するためタイに向かう元副党首を一時拘束。その後釈放されたが、タイにはまだ入れていない。マハティール首相も記者団に内政不干渉を理由に挙げた。

 救国党は近年の選挙でフン・セン氏率いる与党に迫る議席を得ていたが、レンシー氏は2015年、政府批判による名誉毀損(きそん)の疑いで逮捕される恐れが強まり、海外に逃亡。17年には救国党が解党処分となり、党首を引き継いだケム・ソカ氏も国家転覆を謀った疑いで逮捕され、今も自宅軟禁中。18年総選挙では与党が全議席を独占した。

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