タンゴは私の人生だから 折田かおりさん、アルゼンチンで歌手修業 CD制作目指す

西日本新聞 くらし面 酒匂 純子

 タンゴの本場アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで、歌手修業をしている日本人がいる。福岡市の劇団やラテン文化センター「ティエンポ」で働いていた折田かおりさん(40)。お金も経験もなく情熱だけで渡航。仕事を見つけながら音楽学校に通い、9月には地元の大会で3位に入った。師匠で大御所のサンドラ・ルナさんから「自分に最高のものを与えなさい」とCD制作を助言され、クラウドファンディング(CF)で費用を集めている。

 タンゴとの出合いは29歳のとき。趣味でさまざまなダンスを体験するうち、抱擁しながら踊るスタイルに夢中になった。大学でポルトガル語を専攻し、ラテン文化圏の「人との距離が近い」生き方に影響を受けていたこともあった。

 34歳で「1カ月後に死ぬとしたら何がしたいか」と考え「タンゴを踊りにブエノスアイレスに行く」と決心する。仕事を辞め、現地へ。ミロンガ(ダンスパーティーの会場)で踊るうち、生演奏で聞いた歌に心を奪われる。人生の苦しみ、悲しみを情感たっぷりに泥臭く歌い上げる圧倒的な世界。「音楽としてのタンゴの美しさが私の中に流れ込み、恋をした」

 歌の修業をするため「半年後には戻る」と決め、翌月にはいったん日本へ。関門は、寝たきりの母だった。外国で暮らすことに反対し続けてきたが「人生は一度きりだから、好きなことをしなさい」と言ってくれた。鹿児島の田舎町での暮らしは余裕がなく、父は出稼ぎでほぼ不在。母は自分を大学に入れるために苦労した。「母を苦しめたくなくて『いい子ちゃん』をしていて苦しかった。だからその言葉がうれしくて。これからは自分の人生を生きる、と決めた」。ブエノスアイレス行きの切符を取ると、母は他界。手元にあった10万円ほどを握り締め飛び立った。

 今、世界中で踊りとしてのタンゴが人気という。しかし折田さんは「タンゴがファッションとして世界で一人歩きしている」と気になる。アルゼンチンではトップレベルの演奏家でも十分な仕事がなく、海外に流出。今回のCDはルナさんが監修し、一流の演奏家たちが参加する。「日本人である自分が本場のタンゴに敬意を持って取り組むことで、アルゼンチンの人たちが自分たちの文化を見つめ直して誇りを持ってほしい」。そして日本人には「自分のために自由に生きていい。生き方は変えられると発信したい」と言う。

 CFは29日まで、CFサイト「モーションギャラリー」で。目標額は99万8千円。CDは2020年11月完成を目指す。 (酒匂純子)

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