夢はパラ五輪 覚悟を決めた 支えてくれる母にも感謝 戸口瑛莉衣さん(二日市中3年)

西日本新聞 ふくおか都市圏版 上野 洋光

 外見からは分かりにくいが、先天性の障害がある。まひのため左手の握力はほとんどなく、左足を少し引きずる。手も腕も右側に比べ小さく短い。そんな彼女の目標は、2024年のパラリンピックに水泳の日本代表として出場することだ。

 筑紫野市立二日市中学校3年、戸口瑛莉衣(えりい)さん(15)が地元のスイミングクラブに通い始めたのは6歳のとき。入学後、学校でいじめられたこともある。心ない言葉に傷つき、母の菜穂さん(41)に泣きついたこともある。そんなとき、心の支えになったのが「きついけど楽しい」という水泳だった。

 中学校の水泳部にも入り、「もっと強くなりたい」とクラブの選手コースを希望したが「責任が持てない」と断られ、退会した。

 悔しかったが、心は折れなかった。「特別扱いはされたくない。心配もいらない。他で強くなってやると気持ちを入れ替えた」

 パラリンピックの水泳は千差万別の障害の種類や程度をランク分けして競う。10段階ある身体機能の障害のうち軽い方から3番目の「S8」で、現在、日本身体障がい者水泳連盟の発掘選手。最近の国内大会では最長となる400メートルの自由形が得意だ。

 400メートルのベスト記録は7分7秒7。公式大会でこのタイムが出れば、同連盟の育成選手に登録されるが、まだ突破できていない。

 同連盟によると、全国的にも障害者を選手として受け入れるクラブは多くない。「健常者のトップとのタイム差が大きい」ことなどが主な理由という。

 だが、今秋、転機が訪れた。太宰府市のクラブの選手コースに入ることが認められたのだ。1年半指導を仰いだ個人コーチの元を離れ、熱望した「覚悟を決めて水泳に打ち込める環境」が整った。

 昨年11月の千葉、今年3月の大分、9月の横浜…。全国大会には菜穂さんが必ず同行する。離婚した後も自分を育て、看護師として宿直もこなしながら練習や大会に付き添ってくれる母への感謝は尽きない。

 「少しでも母に楽をさせたい」。不自由な左手といろんな調理器具を駆使し、料理にも挑戦。母の作るちょっと甘めの卵焼きが好物で「同じものを」と作ってみるが、「巻き込むのがちょっと難しい」と笑う。

 筋力、柔軟性、スタミナ…。向上させなければならない課題はまだまだ多い。だが、「心機一転。新しい仲間ともっと練習して上を目指す」と意志は揺るがない。引っ込み思案で人付き合いが苦手な娘が初めて自分で決めた選択を菜穂さんは喜び、「後悔しないようにとことん頑張って」と優しく励ました。母娘の二人三脚は続く。 (上野洋光)

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ