【DCの街角から】チャンピオンがいる街

西日本新聞 夕刊 田中 伸幸

 「チャンピオンの街」-。ワシントンDCを今、こう呼んで胸を張る人たちがいる。

 コロンビア特別区(District of Columbia)の略称DCのCを優勝者(champion)と掛けた言葉遊びだ。先週、大リーグのワールドシリーズを地元ナショナルズが制覇。先月には女子バスケットボールで地元チームが全米一に輝いた。アイスホッケーも昨年優勝。DCは今、まさに「チャンピオン」ずくめだ。

 週末にナショナルズの優勝パレードを見たが、普段はエリート然とした人が多い「政治の街」もこの日は皆、表情は晴れやか。歩道はチームカラーの赤で身動きの取れないほど埋め尽くされ、2階建てバスに乗った選手たちに大歓声を上げていた。

 ところで米国では今年、「AOC」も大きな歓声を浴びた。昨年の中間選挙で、米史上最年少の女性として下院議員に当選したアレクサンドリア・オカシオコルテス氏だ。「AOC」は彼女の頭文字を使った略称で、「グリーン・ニューディール」と呼ぶ地球温暖化対策など急進的な政策を掲げ「温暖化のチャンピオン」とも評される。

 10月にあった民主党の大統領候補サンダース上院議員の支持者集会では、彼女が応援演説に立つと会場から「AOC」の大合唱。「未来の大統領だ」と叫ぶ若者もいた。彼女をお目当てに参加し、演説が終わるとサンダース氏の話はろくに聞かずに会場を去る人も結構いた。

 ただAOCを毛嫌いする人も多い。特に彼女のトランプ大統領批判は舌鋒(ぜっぽう)鋭く、トランプ氏は選挙集会のたびに彼女をののしり、支持者も同調して大ブーイングで応じている。

    ☆    ☆

 熱狂的な支持者がいる一方で激しく嫌われる。それはトランプ氏も同じだ。今週、チャンピオンを祝福しようとナショナルズの選手たちをホワイトハウスに招いたが、主力数人が欠席。不人気ぶりを改めて露呈した。

 しかし、めげるそぶりは一切ない。選手の一人がトランプ氏の決まり文句「米国を再び偉大にする」の刺しゅうが入った赤い帽子をかぶると抱きついて会場の笑いを誘い、きっちりと場を盛り上げてみせた。

 大統領選まであと1年。数々の疑惑をしたたかに乗り越えてきたトランプ氏は今また、ウクライナ疑惑の渦中にいる。有権者に「トランプ氏は再選できると思うか」と聞いて回ると、民主党支持者でさえ「そうなってほしくないが…」と自信なさげに答える人が驚くほど多い。

 トランプ氏がナショナルズと同様、チャンピオンのごとくDCをパレードし、赤い帽子をかぶった人で歩道があふれる日が再び来るか-。取材を重ねれば重ねるほど「分からない」。この1年、思い悩む日々が続きそうだ。 (田中伸幸)

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