税滞納者に“困りごと相談票” 長崎市が脱却へ支援

西日本新聞 長崎・佐世保版 重川 英介

 今年7月、長崎市収納課と特別滞納整理室が1枚の文書を作成した。「困りごと相談連絡票」。柔らかなイメージを抱かせる文書名は、税などの滞納者と向き合うミッションと、どこか遠いようにも感じるのだが-。(重川英介)

 文書はA4判。家族構成や連絡先などを書いてもらい、「借金の返済」「家族(引きこもり・暴力)」「病気(入通院)」「障害(本人・家族)」「ひとり親」など、それぞれが抱える困り事や、置かれた家庭環境を記入する。市は滞納者の同意を得た上で、社会福祉協議会など関係機関に情報を提供。社会福祉士との面談を通じて困り事を洗い出し、解決策を模索、行政の支援などにつなげる狙いがある。

 簡単なようだが、良くも悪くも行政は縦割りのためこれまで実現に至らず、担当課の若手十数人が1年がかりで話し合って決めた。

 発端は市の担当職員たちのこんな思いだ。「生活に困窮してやむなく滞納している人もいる。仕方ない、で終わらせたくない」

 親の介護、子どもの引きこもり、配偶者からの暴力…。滞納者の声に耳を傾けると、こうした理由で十分に働く時間を確保できないことが収入の低下につながり、滞納の一因になっている事情が浮かび上がってきたという。

 住民税や保育料、介護保険料などの滞納がある場合、まずは財産の有無を確かめる。だが月々の収入が十分ではなく、やむなく滞納せざるを得ないケースも多い。

 担当課としての「業務」は「押さえることが可能かどうかを確認し、可能であれば押さえること」に尽きる。困っている滞納者に出くわしても、「仕方ない」で終わらせることも可能だ。一方、経験豊富な職員が立場や業務の範囲を超えて適切な助言をして、悪循環からの脱却をサポートしたケースもある。そんな成功例を共有したく、文書の作成に至った。

 他都市では収納担当部署が生活相談を呼び掛けるチラシを配布する事例はあるが、そこから先に進まないケースが多いという。一方、滋賀県野洲市は2016年策定の「くらし支えあい条例」で、すべての市職員を対象に「生活困窮者の発見に努めなければならない」と規定。各課の業務で端緒をつかんだ場合、速やかに相談担当部署につなぐよう徹底している。

 現在、長崎市で連絡票に記載した滞納者は14人。まだまだ抜本改善への道は遠いが、担当職員たちは「滞納者も長崎市民。(払うべき)税金をきちんと納められる状況になるよう努めたい」としている。

    ◇    ◇

困窮原因の解消に期待

 長崎市の市税(住民税、固定資産税、軽自動車税、法人市民税など)の滞納額は、2018年3月末現在で約14億2900万円。5年前の31億4800万円の45%に減少しているものの、担当者は「滞納から抜け出せない人がいる状況は変わっていない」と気を引き締める。

 減少した背景には市の徴収強化などがある。ただ、滞納を解消できたとしても、生活困窮の原因が解消されていない場合、再び滞納に陥るケースが少なくないのが実情だ。市が導入した連絡票はこうした原因を見つけ出し、解消することを目的としている。

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