学校変える「特別活動」=“Tokkatsu” エジプトが熱視線

西日本新聞 くらし面 金沢 皓介

 中東とアフリカの接点にあるエジプトは、2016年に日本と「エジプト・日本教育パートナーシップ」を結び、日本式教育の導入を進めている。普及を図る「エジプト・日本学校(EJS)」が本年度までに40校整備され、授業以外の掃除や日直、学級会といった日本の特別活動を「特活(Tokkatsu)」として取り入れる。現地でカリキュラム作成などに当たる指導主事や大学教授ら20人が10月、福岡県内の学校を巡り、日本式特活の在り方を学んだ。(金沢皓介)

地域交え、協調性育む姿に感嘆

 10日、指導主事らは北九州市若松区の市立小石小を訪れた。子ども同士や先生があいさつを交わす登校の風景から授業、掃除、給食、学級会、一行の歓迎会などを含めて1日の学校生活を体験した。

 訪問団の一人、アシュワック・アブテツレギリさん(42)は「歓迎会の演奏で全ての子どもに役割が与えられ、こなしていたのが印象的だった」と話し、日本では当たり前の光景に新鮮さを感じ取っていた。

 同校の元校長で特別活動を推進してきた大庭正美さん(63)は、特活の意義について合唱会を指導した教師に児童がサプライズを準備してくれたことなど、自らの経験を踏まえて説明。「遊び心も特活の指導の一つ。子どもも教師も通いたくなる学校をつくることが大切」「子どもが主役で教師は“準主役”。特活での子どもと教師の響き合いが感動の場面を生む」などと語り掛けた。

 学校の様子をつぶさに観察し、講話を聞いたアフメド・タウフィックさん(39)は「先生と子どもの仲の良い雰囲気がうらやましい。エジプトでぜひ実践したい」と意欲を見せた。

日本式教育に注目

 国際協力機構(JICA)によると、エジプトの一般的な学校は学力重視で試験直前の暗記学習が中心。権威主義で教師による高圧的な指導も行われ、基本的に学校には児童生徒以外の住民が立ち入れないなど、地域との関係性も閉ざされがちだという。

 「アラブの春」の波及で政情不安や経済低迷が続いていた中、エジプト政府は課題の一つとしていた教育の在り方について、協調性や規律を守る子どもを育てる「日本式教育」に注目。学級活動などの集団活動を通して個性を伸ばし、実践的態度の育成を目的とする特活を、15年からJICAと協力して導入するようになった。

 その結果、試行した学校では教師側が「児童が協力的になった」と捉え、児童側も「学校が前より好きになった」と成果を実感。エジプトの教育で欠如しがちだった部分を補いつつある。子どもたちの意識に効果が見えるようになったことで、エジプトの教育制度も人格形成を重視する方向に変わってきているという。

「エジプトにはない素晴らしいシステム」

 訪問団は14日間の研修で県内の小中高校、大学を視察。見て感じたことをどう本国の教育に生かしていくか深夜まで議論を重ねた。

 18日、北九州市のJICA九州であった成果発表。一人の女性は、小石小に20年以上にわたって、毎朝通学路を掃除する女性や通学路の交通安全を見回る男性がおり、地域が学校を支えていることに感銘し「エジプトにはない素晴らしいシステム」と評価した。別の女性は大庭元校長について「完璧にリーダーシップを果たしており、見本のような存在だ」とたたえた。

 男性メンバーは、学力重視で地域と距離のあるエジプトの教育システムの課題を挙げつつ「学力、健康、道徳面を同時並行で見ており、日本はバランスが取れている」と分析。「エジプトでも保護者が学校運営に積極的にかかわる態勢を構築したい」と力を込めた。

 JICAは21年まで支援を続ける予定。日本の特活はアラブ社会で浸透していくのか。司会役を務めた女性は、手応えをつかんだ様子でこう語った。「私たちの力で明日が変わります」

【エジプトの教育制度】エジプトの教育制度は、日本と同じく小学校6年、中学校3年、高校3年の12年課程で義務教育は小中学校の9年間。開設2年目のEJSでは小学1、2年生のほか、就学前の4歳児(年中)、5歳児(年長)も受け入れており、1校当たり平均約200人が在籍。今後、200校に増やし、義務教育の範囲まで1年ごとに広げていくほか、高校まで拡大する構想もあるという。EJSは週1回、特活の時間(45分)を設けて学級会活動などに充てており、朝の会や帰りの会、掃除の時間などもある。机やいすを一人ずつの仕様にするほか、広い運動場を整備するなど校舎や備品にも日本の特徴を取り入れている。

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