文政権、強まる停滞感 韓国大統領、任期折り返し

西日本新聞 総合面 池田 郷

 【ソウル池田郷】韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日、任期5年を折り返した。法相に起用した腹心のチョ国(グク)氏が親族の不正疑惑で辞任に追い込まれて政権の打撃となり、経済や外交も停滞感が漂う。来年4月の総選挙で革新系与党「共に民主党」が過半数に届かなければ政権がレームダック(死に体)化しかねないが、保守系の最大野党「自由韓国党」も朴槿恵(パククネ)前大統領が弾劾された影響を引きずっており、情勢は読みにくい。

 娘の不正入学疑惑などが浮上したチョ氏の辞任劇は、文政権のイメージを大きく傷つけた。対立する保守勢力を権力や富を不当に継承する既得権益とみなし、看板公約として「公正な社会」の実現を訴えてきたからだ。最新の世論調査で文氏の支持率は44・2%で、不支持の53・1%を下回る。

 さらに経済の失速が国民生活に影を落とす。10月の輸出は前年比14・7%減の467億8千万ドルと、11カ月連続減。2019年の国内総生産(GDP)成長率は、約10年ぶりに1%台に落ち込むとの見方もある。

 識者は「米中貿易戦争の影響だけでなく、経営側より労働者側を重視する文政権の政策が影響した」と指摘する。最低賃金の大幅な引き上げや労働時間短縮などで中小零細企業の業績は悪化。大企業の中にも製造・研究開発拠点を新興国に移す動きがある。

 外交は、文氏が昨年こそ米朝の非核化交渉入りを仲介して成果を上げたが、今年2月に米朝首脳会談が決裂して風向きが一変した。北朝鮮は5月、弾道ミサイルの発射実験を再開。将来の南北統一を呼び掛けるなど秋波を送る文氏を突き放す姿勢を強めている。

 日韓関係も悪化の一途をたどった。元徴用工判決を巡る歴史問題は、7月から輸出管理を巡る経済対立に拡大。韓国が8月に日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄を決めると、同盟国・米国の反発も招いて孤立感を強めた。

 「糸巻きのように絡み合った懸案」(韓国・聯合ニュース)を抱える文氏が4割台の支持率を維持しているのは、日本の政界と同様に野党が分裂状態にあるからだ。朴政権崩壊後の保守勢力は、朴氏に近い「親朴」と、距離を置く「非朴」の対立が続く。総選挙をにらみ自由韓国党の黄教安(ファンギョアン)代表は7日、保守勢力の結集を呼び掛けたが、第2野党などの反応は芳しくない。

 総選挙を控え、文氏の政権運営に強い影響力を持つ青瓦台(大統領官邸)の中枢は、政権発足当初よりも革新色の強い人材で固められつつある。保守系韓国紙は、理念にこだわる文政権の「教条的」な姿勢が、内外の摩擦を招いていると指摘。「長期的な見識で既存政策の修正や補完をすることが必要だ」とする識者の言葉を伝えている。

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