洪水危険地図、九州に遅れ 最大降雨想定、作成1/4弱

西日本新聞 総合面 御厨 尚陽 森井 徹

 想定する最大規模の降雨による河川の氾濫で浸水が発生する区域を示した洪水ハザードマップの作成が、九州で進んでいない。作成を義務付けられた市町村のうち、完了しているのは3月末時点で4分の1弱にとどまり、全国平均を下回る。国土交通省は台風19号の被害を踏まえ、対象河川を中小規模まで拡大する方針を示しており、業務の増加でさらなる遅れも予想される。地球温暖化の影響で九州は他地域より雨量が増えるとみられており、早急な対策が求められる。

 2015年に改正された水防法では、浸水想定区域の基準となる雨量が「数十年から100年に1度」から「千年に1度」に引き上げられた。国は浸水が見込まれる区域がある全国の1347市区町村に、避難所や避難経路などを盛り込んだハザードマップの作成を義務付けている。

 国交省によると、九州7県で対象となる177市町村のうち、作成を終えたのは23・1%(41市町村)。全国の33・1%(447市区町村)より10ポイント低い状況だ。九州で最も進んでいる佐賀でも44・4%で、大分(6・2%)と熊本(9・5%)は1割にも満たなかった。

 進まない要因の一つに、都道府県による「浸水想定区域図」作りの遅れがある。河川ごとに氾濫時の浸水の範囲や深さの予測をまとめたもので、マップの基となる資料だ。3月末現在、国管理は448河川すべてで作成済みであるのに対し、都道府県管理は1627河川のうち54・2%(883河川)しか完成していない。

 九州では福岡、佐賀、大分、宮崎、鹿児島の5県が10月までに完了したが、マップ作りに生かし切れていないのが現状。長崎は本年度中、熊本は来年度中まで作業が続く見込みだ。

 台風19号などによる水害では、浸水想定区域図の作成対象外だった河川でも堤防が決壊する被害などが起きた。国交省は作成対象の河川を中小規模にも拡大する方針で、マップ作成済みの市町村でも見直しを迫られる可能性も出てきた。

 九州大工学研究院の塚原健一教授(防災計画)は「中小河川を対象に加えると、浸水想定区域はかなり広範囲になる。これまでの指定避難所が使用できなくなるケースも考えられ、避難計画の練り直しに労力がかかるだろう」と指摘する。

 国交省は、地球温暖化により洪水が増えるとの予測に基づき、治水計画の抜本的な見直しを進める。専門家の試算では、今世紀末までに気温が2度上昇すれば、九州北西部の降雨量は今の1・15倍となり、全国平均(1・1倍)を上回るという。塚原教授は「地域によっては民間施設を避難所にするなど新たな対策も必要になる。早急に対応するためには、自治体への国の支援や社会の理解が不可欠だ」と話す。 (森井徹、御厨尚陽)

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