佐藤しのぶさんは小学5年のとき家族旅行で広島に行った…

西日本新聞 オピニオン面

 佐藤しのぶさんは小学5年のとき家族旅行で広島に行った。平和記念資料館で見たものが胸の奥に横たわった

▼オペラ歌手の道を進んだ佐藤さんは、いろんな国に行った。広島、長崎は今どうなっていますか、日本人は原爆をどう思っていますか、と聞く人もいた。はっきり答えられなかったそうだ

▼ベラルーシの療養施設から手紙をもらい、チェルノブイリ原発事故の影響で苦しむ子どもたちの前で歌った。必要なのは歌手より医者では、と質問した佐藤さんに施設長は言う。生きる希望や夢を与えるために歌はあるのでは?

▼佐藤さんは歌うことの意味を自分に問い直した。日本人としてなすべき使命のようなものを感じ、胸の奥の記憶と結び付いて形になっていく

▼「リメンバー」という曲が生まれた(作詞・なかにし礼、作曲・鈴木キサブロー)。2013年、なかにしさんと一緒に日本記者クラブで会見し、小学生の時に被爆地で体験した衝撃から話して歌った。覚えた手話をしながら歌った

▼戦争と 核兵器のない 平和の実現を 願う人は集まれ!…。各地を巡って歌い、日本を代表するソプラノ歌手を応援する人が増えた。大勢のファンは先月初めの訃報をどう聞いたろう。体調不良でコンサート出演取りやめと発表されて5日後の急逝だった。61歳。自分が歌うべき歌を「声があるうちに」と話していた佐藤さんを思い出した人もいるだろう。

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