人権重視で対立の解決を 崔龍五氏

西日本新聞 オピニオン面

◆韓国人観光客減少

 「息苦しい」。10月末、経営する宿泊所を訪れた40代の韓国人女性が漏らした。

 毎月1日の有給休暇では3連休が限度で、異国情緒を味わえる日本旅行がぴったりだった。ところが最近は、周りの視線が気になって難しくなったと言う。看護師である女性は小学6年の娘に「この時期に、なぜ日本に行くの」と言われ、病院の同僚には「日本に行く」とは言えなかった。釜山港までのタクシーで運転手が「日本に行くんですか」とあいさつしてきた時、「ちょっと仕事で」と思わず言ってしまったと明かした。

 20年間の新聞記者生活を終え、長崎県対馬市の比田勝に来て丸6年。最近、宿泊所の運営が厳しい。たまに来るのは高い交通費でも来てくれる日本人と、韓国に住む西洋人らで、韓国人はまれである。

 以前は20~30代の若い女性が7割を占め、生き生きと過ごしていた。競争の激しい韓国社会で暮らす若者にとって、対馬はホッとできるヒーリングの場所だったのだ。他の日本の都市とは違う「田舎」の良さだろう。しかし、今はさびれた感じさえする。

 「日本は自分たちが経済的に先行していると思ってパワハラしている」。そんなイメージが韓国の若者の間に広がり、若年層までが「日本不買」に参加した。半導体部品を標的にしたことが、韓国の未来に打撃を与えるように映り、プライドを傷つけられた。それが対馬から韓国の若者が消えた理由だ。

 日韓対立によって、日本は観光など主に経済的損失を懸念しているようだが、一番の問題は日本好きの若者の心が日本から離れていることだ。両国の未来を考える時、非常に深刻な現象である。

 対立の発端となった徴用工訴訟について、弁護士など日本の100人も韓国側弁護団と同様に「被害者個人の人権救済」を求め、1965年の日韓請求権協定に絡み「個人請求権は生きている」との声明を判決後、発表している。

 このように外交が機能せず対決する時、被害者は結局、いつの時代も両国の「地方」であり「庶民」なのだ。

 両国は共に成熟した市民社会を構築している。人権重視の立場に違いはないはずだ。そうであれば、互いに弱い立場の市民の人権も考慮してほしい。「市民の利益は何か」を問うことが、日韓対立の解決に向かう第一歩である。

    ◇       ◇

 崔龍五(チェ・ヨンオ)氏 1969年生まれ、韓国釜山市出身。釜山日報記者を経て、長崎県対馬市に2014年移住。同市上県町で外国人観光客向けの宿泊所を経営する。

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