藝術舞台2019 令和のはじめ(4)長唄「夜遊楽」 心のひだまで届く音

西日本新聞 ふくおか都市圏版

 演奏中の杵屋弥佶はひっきりなしに糸巻を触っている。絹糸が伸びて微細に変化する音が気になるのだ。

 「立て三味線(リーダー)としては当然のことで」。全体の調和のために自らの音を変えていたのか。心のひだにまで届く演奏の機微は、素人が踏み込める領域ではない。

 芸術舞台2019では長唄「夜遊楽」で秋の夜長を表現する。そこではシャミドリンという高音楽器が用いられる。東京芸大教授で人間国宝だった山田抄太郎が作らせた。同大から持ち出して演奏されることは少なく、九州では初の披露となる。

 杵屋は小学生低学年で三味線を始め、同大で才能を開花させた。邦楽にとどまらず西洋楽器との共演も多い。「フランス人は気に入らないと、演奏中でも席を立ってしまう」。そんな彼らが万雷の拍手を送った。アメリカ南部では白人と黒人がともに理解してくれた。バークリー音楽大学でも喝采を浴びた。

 夜遊楽に物語はない。「ビバルディーの四季を聴いたら、ああ秋だな、冬だなと思うでしょ」。偉大なものは単純で奥が深い。杵屋は自らの演奏を語ろうとはしない。言葉では語れないのだ。 =文中敬称略

 ▼藝術舞台2019 12月1日午前10時半開演、福岡市民会館。全席自由、4千円(当日4500円)。入場券はチケットぴあで販売中。問い合わせは福岡文化連盟=092(711)5585。

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