完走請負人は心の支え 最後尾から鼓舞し続け 福岡市の篠崎さん

西日本新聞 横田 理美

 皆で励まし合ってフィニッシュを-。そんな目標を掲げたフェイスブック上の団体が、福岡マラソンを走る市民ランナーの心の支えになっている。その名も「福岡マラソン完走するバイ! ランニングクラブ」。400人超の大所帯を束ねるのは福岡市東区の会社員、篠崎正弘さん(51)。10日の大会では制限時間の7時間ペースで最後尾を走る“非公式ペースランナー”に徹し、各収容関門をぎりぎりで通過するランナーたちを鼓舞し続けた。

 「ここで諦めたら後悔するぞ」。正念場の35キロ、第8関門手前で篠崎さんが叫ぶ。片手に黄色いメガホン、胸には「完走請負人1号」の文字。「2号」の相棒とランナーを激励し、再び後に付いて走りだす。6時間の設定が最後となる公式ペースランナーと色違いの、銀星の風船が背中で揺れる。思いは一つ。「一人でも多くに達成感を」

 42歳の時、知人に誘われ赴任先の宮崎で初マラソンに挑戦。足を引きずりフィニッシュすると、数日前に居酒屋で知り合った友が迎えてくれた。「仲間が待っているのがこんなにうれしいなんて」。完走の達成感と相まってマラソンのとりこに。自己ベスト3時間22分12秒の実力を付けた。

 2013年秋に翌年の福岡マラソン初開催を知り、地元でデビューする初心者ランナーを思いやった。「荷物は自分で運ぶの?」「そもそも完走できるの?」。かつての自分を重ね合わせ、「福岡の街並みを満喫して走る手助けをしたい」と思い立った。

 フェイスブックでクラブを結成すると、すぐに100人近くが名を連ねた。マラソンの「いろは」を発信し、練習会には広島などから15人が参加した。第1回大会後は50人で祝杯を味わった。「一人じゃないから頑張れた」。苦楽を共にした最高の仲間になった。

 登録人数は増え、多い時には900人を超えた。クラブで出会った30代夫婦は3年前、完走直後に指輪を交換。「人生のマラソンを楽しんで」と祝福した篠崎さんを父親のように慕う。

 今大会、制限時間のわずか1分46秒前にフィニッシュゲートに滑り込んだ福岡市博多区の会社員、武林久美さん(37)。負担になっていた重いウエストポーチを、篠崎さんが途中で預かってくれた。「初挑戦で何も分からず荷物を入れ過ぎちゃって。本当に助かりました」と、胸に輝くメダルを満面の笑みで見つめた。

 同胞の完走を見届けた篠崎さんも7時間ちょうどにゲートをくぐった。今年の完走率は96・4%。寸前で涙をのんだ人はおらず、見事に完走を請け負った。「お役に立ててよかった」。1万人余りがくぐったフィニッシュゲートを、晴れ晴れとした表情で見上げた。(横田理美)

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