「靴は手入れがいいとね、ちゃんと恩返ししてくれるからね」

西日本新聞 社会面 阪口 由美

 履いて歩いて、帰ったら洗って、クリームを塗って磨いて。「靴は手入れがいいとね、ちゃんと恩返ししてくれるからね」。店主の言葉を忠実に守って約8年。まるで「足の一部」になった、オーダーメードの登山靴。一生、一緒に山歩きを続けたい。そう心に決めた相棒なんだけど-。

 すり減った靴底の張り替えのため、久しぶりに東京の店を福岡から訪ねた。店主はちょうど、別の靴底の張り替え作業中。ホットプレートで温めて、大きなペンチでぐいぐい引っ張るが、なかなか剥がれない。「最近は接着剤が強力になり過ぎてさ、靴本体まで傷んじゃうんだよね」。底の張り替えは「今では3回くらいが限度だろう」という。

 靴作り一筋65年。冒険家の植村直己さんらの靴を手掛けたことでも知られる老舗。「一生履いてもらえちゃったら、それはそれで商売上がったりなんだけどさ」。そう話しながらも店主の笑顔は寂しそうに見えた。 (阪口由美)

PR

デスク日記 アクセスランキング

PR

注目のテーマ