動かぬ右手 救ったピアノ 病発症後も活躍「蜜蜂と遠雷」演技指導 長崎出身・本山さん「一音一音 いとおしく」

西日本新聞 社会面 竹中 謙輔

 国際コンクールを舞台に4人のピアニストの葛藤や成長を描く映画「蜜蜂と遠雷」で、長崎県出身の音楽家がピアノの演技指導を担当した。東京芸術大非常勤講師でピアニストの本山乃弘(のりひろ)さん(36)=埼玉県朝霞市。学生時代に発症した右手の神経疾患とも向き合いながら研さんを積み、演奏活動や後進の指導に尽力している。12月には少年時代を過ごした長崎県佐世保市でリサイタルを開く。

 本山さんは同県五島市生まれ。佐世保市の中学を卒業後、ピアニストを目指して東京芸大付属音楽高、東京芸大に進学した。

 鍵盤に触れる指に異変が生じたのは大学3年の時だった。意思に反し、かじかむように右手親指が丸まり、演奏会でミスをするようになった。医師が告げた病名は「フォーカル・ジストニア」。体の一部を反復して使う職業に多く、同じ病に悩む演奏家もいる。

 本山さんはピアニストへの夢を追い続けた。「のんびりした性格だからか、不思議と前向きに考えることができた。病気と向き合い、体の仕組みを勉強してちょっとずつ治そうと」

 左手だけで演奏できる曲にも取り組み、大学の卒業試験に合格。リハビリを続けながらパリに留学し、首席の成績を修めた。右手は元通りとはいえないが、恩師の指導で理想の手のフォームを習得した。

 「言葉になる前の自分の気持ちが音になって表れる。メンタルが弱ったときもピアノと対話をして救われた。左手だけの演奏を経験し、一音一音がよりいとおしくなった」。思うように弾けない悔しさを乗り越え、自身を前に進ませてくれたのもピアノだった。

 「蜜蜂と遠雷」は2017年に直木賞と本屋大賞を受賞した恩田陸さんの小説が原作。松岡茉優さんら4人がピアニストを演じる。本山さんは、年齢制限ぎりぎりで「これが最後」とコンクールに挑む男性を演じた松坂桃李さんの指導を担当。助言をのみこむ松坂さんの「吸収力」に驚かされたという。「ピアノを弾く原点を思い出す映画。ピアノに限らず、好きなことを究める過程で経験する葛藤など、多くの人に共感を与えるのでは」と語る。

 佐世保市でのコンサートは12月7日午後2時から、アルカスSASEBOで。 (竹中謙輔)

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