漂う“たぬき感”にゃん太郎

西日本新聞

 【ねこ駅長を訪ねて(2)JR嘉例川駅】鹿児島にある古い古い木造駅にも、“ねこ駅長”がいるという情報を耳にした。確認の電話をかけると「高齢なので夏場は療養していました。健康状態が良ければ駅にいますが…」とのこと。会えるか否か、行かなければ分からない。それなら答えは「行きます!」しかない。カメラを片手に列車に乗った。

【写真特集】嘉例川駅で過ごすにゃん太郎

 目的地は、鹿児島県霧島市にあるJR嘉例川駅。鹿児島の玄関口・鹿児島中央駅までは、九州新幹線で博多駅からわずか約1時間半。そこから日豊線に乗り換え、錦江湾に浮かぶ雄大な桜島を眺めながら、約40分で隼人駅に到着。そこから肥薩線で約20分揺られると、山あいにある嘉例川駅が見えてきた。

 焦げ茶色にくすんだ木の柱や屋根、看板、椅子…。周囲の紅葉も相まって、まるで100年前にタイムスリップしたような感覚になる。

明治時代に建てられた築110年の木造駅舎。レトロな駅舎は、国の有形文化財にも登録されている

 駅舎の外に出ると、白と茶の毛並みの美しい猫がいた。鼻と両目の周囲が黒っぽく、どこかタヌキのよう。でも、透き通ったブルーの瞳が、なんとも上品で美しい。「この子が嘉例川駅で『観光大使』を務める“にゃん太郎”です」と、嘉例川地区活性化推進委員会委員長の山木由美子さん(68)。山木さんが首もとを優しくなでると、にゃん太郎はうれしそうに目を細めた。

   ◇  ◇

 嘉例川駅の歴史は100年以上前の1903(明治36)年にさかのぼる。木造の駅舎は開業当時のもので、国の登録有形文化財でもある。全国的にも珍しい「特急が止まる無人駅」として知られている。鹿児島空港や霧島温泉も近く、駅を行き交う人の中には、スーツケースを持った旅行客も目立つ。

駅のホーム。奥の待合室に、にゃん太郎の部屋がある

 にゃん太郎は4年前の秋、突然、駅に現れた。待合室にあるかごの中で、丸くなってすやすや眠っていたそうだ。獣医師によると、推定15~16歳の雄。人間なら80~90代に相当するご長寿だ。人懐っこく、耳は地域猫として去勢手術をしたV字印の「さくら耳カット」が施されている。

 ちょうどそのころ、嘉例川駅は利用客減少にあえいでいた。一時はJR九州の豪華寝台列車「ななつ星」の停車駅だったが、コースの変更に伴い通過駅に。そんな時、救世主のように姿を現したのが、にゃん太郎だった。

小屋の前でポーズをとるにゃん太郎。観光大使就任のお祝いに、JR側から贈られたという

 「飼い主がいるかも」と山木さんは5~6カ月ほど駅で面倒を見たが、誰も名乗り出ない。駅の“看板猫”として紹介し、新たな生活が始まった。無人駅のため“駅長”のポストがなく、2016年5月から地区活性化推進委の「嘉例川観光大使」として活躍している。

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