大水害1カ月 九州の「備え」も総点検を

西日本新聞 オピニオン面

 「災害列島」といわれながらも日頃の備えは脆弱(ぜいじゃく)だったと考えざるを得ない。私たちは防災技術の進歩を過信し、大自然の脅威を見くびってはいなかったか。今年も繰り返された悲劇の教訓を改めて心に刻みたい。

 東日本に甚大な被害をもたらした台風19号の襲来から、きょうで1カ月になる。19号に続く低気圧と21号による豪雨禍も含めると、死者・行方不明者は100人を超え、住宅の損壊や浸水は昨年の西日本豪雨の2倍に近い約9万棟に達した。近年では最大規模の水害である。

 政府が被災地の復興や支援に全力で取り組むことは当然として、私たちがしっかりと見据えたいのは、それこそ洪水のように次々と露呈した防災・減災対策の不備や課題であろう。

 河川の管理、ハザードマップ(浸水などの被害予測地図)の活用、避難所の運営、大量の災害ごみの処理、ボランティアの確保‐これらはいずれも十分には機能せず、想定の甘さや準備不足などが明らかになった。

 中でもハザードマップを巡る問題点は重ねて指摘したい。各地で予測通りの地域が相当数浸水したが、そこには役場や学校などがあり、避難や救助は混乱を極めた。他方、堤防の決壊などが想定されず、マップが未作成の地域での浸水も相次いだ。国土交通省はこれを受け、マップの作成対象を主要河川に限らず中小河川にも広げる方針を示した。当然だろう。マップの精度向上や周知も徹底したい。

 19号による土砂災害は800カ所を超え、一つの台風としては最多だった。千葉県では19号後の豪雨で土砂災害警戒区域外の家屋が倒壊し、死者も出た。区域指定は気候変動や地形の浸食、宅地開発の状況などをにらみ、不断の見直しが必要だ。

 東京など都市部では避難所の数が足りず、指定された場所に入れない人もいた。福島県の避難所ではノロウイルスの集団感染が発生し、衛生管理の難しさを露呈した。災害ごみを巡っては集積場所の数や処理が追いつかず、自治体の広域連携の必要性が改めて浮かび上がった。

 内閣府によると、これまでに各地で10万人以上がボランティア活動に従事した。ただ被災地は広域に及び、交通網の寸断もあって宮城、福島両県などでは人手不足に悩む自治体もある。

 こうした教訓は無論、九州にも当てはめてみる必要がある。今年の台風禍は東日本に集中しているものの、元々九州はその常襲地域である。近年の気候変動により想定を上回る風雨や7県全域に及ぶ災害の恐れは十分にある。いかに対応するか。被災地への支援を続けつつ、私たちの「備え」も総点検したい。

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