「ビルマの風俗習慣」を読み解く ビルマ戦記を追う<34>

西日本新聞 文化面

「ある商社員と大東亜戦」に名前の出てくる国分正三氏は戦前ビルマで諜報(ちょうほう)活動等を行ったことで知られている。戦時中もビルマへ赴いているが、その活動詳細を知る機会に私はまだ残念ながら恵まれていない。

 本書「ビルマの風俗習慣」は昭和十八年から十九年にかけて三冊出された小冊子である。座談の形式がとられており、ビルマに関する様々(さまざま)な質問に国分氏が答えている。銃後の人々に向け、こうした形でビルマを伝えていたのも戦争の一面であるから紹介の意義は大きい思う。当時のビルマ人はどんな暮らしをしていたのか。日本人はビルマ人をどうとらえていたのか。現代人の目にも興味深い。

 たとえばビルマ人の身なりである。ロンジーと呼ばれる筒状の長い腰巻きは有名だが、本書の解説はそれに留まらない。男は「ワイシャツのカラーを取つた時の」シャツを着て、女は「乳バンドと云うやうなぴちんとしたものをあて、其(そ)の上に主としてジヨーゼット等で作つた薄い羽根のような上衣」を着るとある。非常に細かい。履物としてはゲタとサンダルが主に使用されていることと、その形状が解説されている。さらには未婚女性と既婚女性の髪の結い方などが語られている。これらに民族ごとの違いが加わる。

 食についても、シャン州における豆腐、納豆、みそ汁など、それぞれ日本とどう違うか語られている。

 納豆については、作り方は日本と同じだが「餘(あま)り絲(いと)を曳(ひ)かない」とあり、そのままの形で売られているともある。すなわち日本人の目にも納豆と分かる形で市井に存在していたわけである。市場等で売られている納豆は形状加工されたものばかりで日本兵が接してもそうとは気づかなかったろうと思っていた私にとって、これは大きな発見であった。各種戦記に漂う日本人とビルマ人の親和性の高さは、こうした食の類似性にも支えられていたのだろうと今回再読して思った。

 (こどころ・せいじ、作家)

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古処誠二(こどころ・せいじ) 1970年生まれ。高校卒業後、自衛隊勤務などを経て、2000年に「UNKNOWN」でメフィスト賞を受賞しデビュー。2千冊もの戦記を読み込み、戦後生まれながら個人の視点を重視したリアルな戦争を描く。インパール作戦前のビルマを舞台にした「いくさの底」で毎日出版文化賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。直木賞にも3度ノミネートされている。

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