廃校を宿に活気再び 日田市 住民手料理でおもてなし 教室の落書きに“胸キュン”

西日本新聞 もっと九州面 笠原 和香子

 少子化、過疎化により各地で学校の統廃合が進む中、廃校になった地域ではにぎわいを取り戻そうと、住民らが学校跡地の活用に乗り出している。大分県日田市でも小中学校の跡地の7割が公民館や工場などに姿を変えて地域の交流拠点になっている。同市羽田の「羽田多目的交流館」もその一つ。郷愁を感じさせる木造校舎に宿泊できて地元女性たちの手料理も味わえる人気施設と聞き、記者も一夜を過ごしてみた。

緑したたる高尾山
清き流れの有田川
年月重ねたせんだんに

 交流館はこの校歌の通り、静かな山あいにあり、有田川のせせらぎと虫の音が耳をくすぐる旧羽田小跡地にある。往時は200人を超える児童が学んでいた同小も2007年3月、最後の卒業生3人を送り出し、131年の歴史に幕を下ろした。交流館は12年にオープン。グラウンドには今も同小のシンボルだったセンダンがたたずみ、夏にはアオバズクが訪れる。

 「いらっしゃい」。10月下旬の夕方、交流館に着くと、後藤公利館長(68)がにこやかに出迎えてくれた。教室を改装した広さ40平方メートルほどの宿泊室を手始めに、さっそく木造2階建ての旧校舎を散策した。

 当時の教室がそのまま残る「学習室」では、机に落書きを見つけた。「魂」という文字だろうが少し足りない…。漢字を間違えただけなのか。それとも先生に怒られて最後まで削れなかったのか。想像が膨らむ。

 壁に相合い傘や名前が刻まれた教室も。「ゆ」とだけ刻まれた文字に、小学校の頃、かなわなかった「ゆうた君」への恋心を思い出し、少し胸がキュンとした。

    ◇   ◇

 午後7時半ごろ、ランチルームに向かうと、市内外のサッカーチームの小学生約40人がにぎやかに夕食中だった。交流館の宿泊は利用者10人以上から受け付けており、この日、私は子どもたちの宿泊に便乗させてもらったのだ。

 食事は、地元の女性グループ「せんだん」が作る。宿泊客の年齢や希望で献立を考えるというメニューはこの日、地元の米や野菜を使った甘口カレーライス。おかわりを試みたが、子どもたちとの競争に敗れ涙をのんだ。そんな子どもたちに建物が旧校舎と伝えると「え! 学校だったの?」と目を丸くしている。そして「じゃあここは元給食室だね?」ときた。残念、答えは職員室でした。

 私の寝床は床に畳を敷いた1階の旧保健室。布団に横になると、室内をぼんやり照らす月明かりが心地よかった。「夏ならアオバズクの鳴き声が聞こえるかな」。そんなことを考えながら眠りに落ちた。

    ◇   ◇

 交流館の利用者は、昨年度初めて3千人を超え、このうち約1200人の宿泊者のほとんどは市外からのリピーターだという。ゆったりと流れる自然豊かな田舎の時間。郷愁をそそる小学校の風情。何より住民たちの飾り気のないもてなしと温かい笑顔があるからだろう。

 運営を担う住民グループ「羽田多目的交流館運営協議会」の後藤健一会長(71)は言う。「真っ暗な田舎の夜、交流館に明かりがともるとうれしくなる。もっともっとたくさんの人が訪れる場にしたい」

 翌日の帰り際、「ゆ」の落書きを記念に撮影しようと探し回ったが結局見つからなかった。私は後ろ髪を引かれる思いで、交流館を後にした。

 (笠原和香子)

 ▼メモ 日田市内の学校跡地23カ所のうち、17カ所が地域の交流館や公民館などとして活用、食品会社の工場やレストランになった跡地もある。羽田多目的交流館の宿泊費は未就学児740円~中学生以上2750円。「せんだん」の食事も予約制で1人朝食450円、昼食550円、夕食750円。日帰り利用者も可。午前8時半~午後5時。水曜休館だが予約があれば開く。同館=0973(24)8421。

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