郵政混迷 株下落に拍車 金融2社も売却進まず

西日本新聞 総合面 飯田 崇雄

 日本郵政グループを巡る不正販売問題では、かんぽ生命保険とゆうちょ銀行の金融2社の株価も下落傾向に拍車が掛かっている。このため両社の株式を保有する日本郵政は売却しようにもできない状態。2012年に民主党政権が行った郵政民営化の枠組み見直しが株式売却のテンポを鈍らせた側面もあり、金融2社が間接的な政府関与から脱却するめどは立っていない。

 かんぽ生命とゆうちょ銀は日本郵政と同じく、15年11月に東証1部上場を果たした。日本郵政はこれまで、かんぽ生命株を2回、ゆうちょ銀株を1回売りに出したが、今も半数以上の株式を保有。かんぽ株は約65%、ゆうちょ株に至っては約89%持っている。

 金融2社が金融業界から「民業圧迫」批判を浴びるのは、日本郵政の「大株主」が政府だからだ。間接的な政府関与の仕組みは信用力を高めるため、民間金融会社と公平な競争条件にあるとは言えない。

 このため郵政民営化法は、日本郵政が金融2社の株式を5割以上処分するまで、2社に「足かせ」を設けている。2社は新規業務に乗り出す場合、監督省庁の認可が必要。さらに政府の郵政民営化委員会による意見聴取も義務付けられ、それだけで「早くて1~2カ月、長いと半年程度」(委員会事務局)かかる。

 このほか民業圧迫批判に配慮し、かんぽ生命は累計2千万円の加入限度額、ゆうちょ銀は通常と定期で計2600万円の預入限度額が政令で定められている。この規制は日本郵政が2社の全株式を処分しないとなくならない。

 金融2社が政府から完全に「自立」するには日本郵政の保有株式の売却を進める必要があるが、2社とも株価は下落傾向が続く。上場時に2929円の初値を付けたかんぽ生命は1788円(12日現在)と約4割安。初値が1680円だったゆうちょ銀も1090円(同)で約35%下げた。売却しても「今の状況で(買いの判断は)なかなか難しい」(市場関係者)のが現状だ。

 株式売却が停滞する背景には政治も関わっている。05年に成立した郵政民営化法は、日本郵政は貯金(ゆうちょ銀)、保険(かんぽ生命)の2社の株式を17年9月末までに「全株式を処分」と明記。だが民主党政権は12年の法改正で「できる限り早期に処分」と後退させたため、売却への切迫感が一気に失われた。

 日本郵政の初代総裁だった生田正治氏は月刊誌で「日本郵政とのしがらみを断ち切ることで初めて真の市場競争力を獲得できるが、現状では当初の理念から遠ざかっているようにしか見えない」と指摘する。

 開会中の臨時国会でも、政府関与の在り方など日本郵政グループの経営を巡る本質論は深まらないまま。不正販売問題で表面化した混迷はまだ続きそうだ。 (飯田崇雄)

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