大学入試記述式 見切り発車は許されない

西日本新聞 オピニオン面

 大学入学共通テストで導入予定の記述式問題の課題を検証するため、大学入試センターが模擬テスト方式の調査を始めた。2021年1月の本番に備えた最後の大規模検証という。過去の調査で目立った採点ミスの防止が主目的とされるが、課題は他にも山積みである。文部科学省はセンター任せにせず、抜本的に計画を見直すべきだ。

 記述式問題は現行のマークシート式では測れない思考力や表現力を問うことを目的に、国語と数学で導入される。受験が想定される50万人規模の解答を短期間で採点するには1万人程度の人員が必要だという。このため採点業務はベネッセコーポレーションのグループ会社に全て委託することになっている。

 昨年の調査では、国語で0・3%の採点ミスがあった。50万人で考えると1500人分でミスが発生したことになる。公平性に大きな疑問符が付く調査結果と言わざるを得ない。

 さまざまな表現があり得る記述式の解答を、1万人もの人が同一基準で公平に採点できるのか。採点にはアルバイトを使う計画もあり、本番ではさらにミスが増えるのではないか。受験する側の不安が膨らむのは当然のことだろう。

 現行マークシート式は自己採点の確度が高く、結果を志望校選択に使いやすい。一方、公表される解答例を基準にする記述式の自己採点にはどうしても曖昧さが避けられない。

 過去の調査で自己採点と実際の採点にずれが生じた割合は、国語で最大3割に達した。自己採点による得点に確信が持てなければ、志望校の難易度を下げるなど意に沿わない対応を迫られる受験生も出るだろう。

 採点ミスを防いで、自己採点とのずれも抑えるために、簡潔で採点しやすい設問にする。こんな対処案も浮上しているというが、それで思考力や表現力を十分に測れるのだろうか。本末転倒にもなりかねない。

 共通テストへの記述式導入には元々、反対の声が根強い。「思考力や判断力は各大学で行う2次試験で評価すればよい」という意見も少なくない。萩生田光一文科相は予定通り導入する方針を示しているが、現状は受験生が安心して臨める仕組みにはほど遠い。

 大学入試への英語民間検定試験導入は、文科省が教育現場の不安を軽視して強行した結果、混乱し白紙化に追い込まれた。野党は記述式についても中止法案提出を検討している。

 文科省は一度立ち止まり、何のための記述式導入なのか、根本から問い直すべきだろう。生煮えの仕組みのまま、見切り発車することは許されない。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ