琴の「聖地」で全国箏曲祭 久留米市12月1日賢順記念 登竜門に国内外から25奏者

西日本新聞 もっと九州面

 国内屈指の琴のコンクール「第26回賢順記念全国箏曲祭」(西日本新聞社など後援)が12月1日午前10時から、福岡県久留米市野中町の石橋文化ホールで開かれる。生田流、山田流といった流派や、13絃(げん)、25絃などの琴の種類、参加者の国籍、年齢、演奏歴を問わない大会で、琴奏者の登竜門に位置づけられている。

 箏曲祭が久留米市で開かれているのは、同市が琴の「聖地」だからだ。「近代箏曲の祖」とされる諸田賢順(1534~1623)が、久留米の善導寺で「筑紫箏(つくしごと)」のルーツを生み出した歴史を持つ。

 武家に生まれた賢順は、父が戦で亡くなった後、7歳で浄土宗の善導寺に入った。10代前半で浄土仏事に使う箏を上手に弾いたと伝わる。

 善導寺の境内には賢順をたたえる「箏曲発祥之地」の碑が立つ。本堂に安置されている「二十五菩薩(ぼさつ)」のうち、金蔵菩薩と金剛蔵菩薩の2体は琴を弾いている。阿弥陀(あみだ)如来と二十五菩薩が、楽器を弾きながら死者を迎えに来るという仏教の教えを表している。

 箏曲祭は、こんな歴史、文化的背景を踏まえ、久留米市を「琴のまち」として発信しようと、1994年に始まった。

 今回は43人が予選に応募。佐賀県、熊本県のほか各地から25人(15~55歳の女性21人、男性4人)が本選に進んだ。近年、琴の人気が高い海外からは昨年初めて1人が本選に進出。今年も米国の1人が予選通過した。

 本選では箏曲家や作曲家など5人が審査。最高賞の賢順賞や銀賞、銅賞などを選ぶ。特別演奏会もあり、三池高(福岡県大牟田市)の邦楽部、久留米三曲協会などが演奏する。主催の賢順記念全国箏曲祭振興会会長の小島美子(とみこ)・国立歴史民俗博物館名誉教授(90)=日本音楽史=は「青木繁や坂本繁二郎の絵画、筑後川や耳納(みのう)連山といった自然など、久留米は文化都市の条件がそろっている。その魅力の一つとして、箏曲祭を楽しんでほしい」と話す。

 入場料800円。高校生以下無料。同会事務局=0942(65)3075。

行政の支援途絶え 16年から民間主催

 琴演奏者が目標とするコンクール「賢順記念全国箏曲祭」は民間の賢順記念全国箏曲祭振興会が主催しているが、運営は苦しい。

 当初は久留米市が補助金を出し、事務局も市役所に置いていた。しかし、一定の役割を終えたとして2015年度で支援を終了。16年から久留米郷土研究会や久留米三曲協会のメンバーでつくる振興会が主体となって箏曲祭を開催している。法人と個人による「箏曲祭を支援する会」の資金援助はあるものの、毎年の開催費用は全国の企業や個人から寄付を集めなければならないという。

 振興会会長の小島さんは「箏曲祭で賢順賞を取るとステータスになる。受賞後、世界で活躍している人もいる」と大会の意義を強調し、支援を呼びかけている。

1音のミスも許さぬ真剣勝負 14年賢順賞松下知代さん(熊本市)

 賢順記念全国箏曲祭で2014年に賢順賞を取った熊本市の松下知代さんに、琴奏者にとって箏曲祭はどんな存在なのかを聞いた。

 3回目の挑戦で賢順賞を取ることができました。前の年に予選落ちしたので、予選に提出する演奏をスマートフォンで168回も録音しました。「1音のミスも許さない」との覚悟でした。それだけやったことが技術的、精神的に、本選の舞台に生きました。

 箏曲祭は山田流や生田流など流派は問いません。楽器も13絃や17絃、25絃など琴ならば何でもよく、バラエティー豊かな、他流試合の真剣勝負と言えます。

 権威のある賢順賞を取ると世界的に注目されます。私も受賞後すぐに韓国の公的な演奏会にソリストとして呼んでもらえました。

 久留米は琴の聖地。諸田賢順が琴を学んだ善導寺を訪ねると感動を覚えます。(野津原広中)

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